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僕がいわゆる「ダブル不倫」を経て家を出て再婚し今に至るまで

「結婚」について今一度考えてみる

2013年に『自殺』(朝日出版社)という衝撃的なタイトルの本を出し、翌年講談社エッセイ賞を受賞した末井昭さん。その『自殺』に続いて書いた本が『結婚』(平凡社)だ。

結婚という誰にとっても身近なテーマを、自らの体験を元に掘り下げ、結婚の意味を探る本だ。「あの本を読んで結婚したくなった」とか「彼氏に読ませたい」とか、読者に反響が広がっている。なぜこの本を書いたのか、著者の末井昭さんに訊いてみた。

妻とも愛人とも別れたくなかった

帯に「読んだら絶対結婚したくなくなる本だったら書きたい」とありますけど、これは、世の男女に結婚してもらいたくないっていう思いがあったからですか?

末井「最初に編集の方から、平凡社のウェブマガジンで『結婚』について書かないかと言われたんですけど、本にするのが前提だと思ったんで、書店に置いてある結婚についての本をあれこれ想像してみたんです。そういう本を買ったことも読んだこともないのであくまで想像ですけど、『結婚するな』っていう本はまずないだろうと思ったんです。おそらく、どうすれば結婚がうまくいくかということが書かれているんじゃないかと。

そして、それは結婚のメリット、デメリットみたいなことや、損得や駆け引き、夫と妻の心理状態、それに対する対応みたいなことが書かれているんじゃないかと。でも、そういうハウツー本は、結婚にはまったく役に立たないと思って、それを揶揄するような本を書きたいと思ったんです。でも、それは最初にちょっと思っただけだったんですけど」

結婚のハウツー本は意味がないということですか?

末井「冠婚葬祭的なことは別として、結婚のあり方や考え方は人それぞれ違うと思うんですよ。いろんなケースがあるから一般論では語れない。だからハウツー本を書くとしたら無理があると思ったんです。

もともと結婚のハウツー本を書きたいとも思ってなかったんで、無理でも何でもいいんですけど、じゃあ自分は何が書きたいかを考えると、結局自分のことになってしまうんです。自分のことなんだけど、そこに普遍的なことも含まれてるんじゃないかと」

 

最初離婚の話から始まりますね。

末井「僕は2回結婚しているんです。書きたかったのは2回目の結婚のことだったんですけど、最初の結婚のことを書かないと2回目のことがわからないと思って、最初に前の妻と知り合ってから、29年後に僕が家を出るまでのことを書きました。

僕にとって2つの結婚は、ある意味正反対みたいなところがあって、前の結婚のことを書くことによって、その対比がくっきりするようにも思ったからです」

1回目の結婚と2回目の結婚とでは、どんなところが違いますか?

末井「最初の結婚のときは、結婚の意味とか考えたこともなく、ただ一緒に暮らしているだけだったんです。

最初は共働きだったんですけど、そのうち妻は専業主婦になって、僕は出版社で雑誌の編集をやっていたんですけど、ものすごく忙しくて家に帰らないこともたびたびあったんです。そのうち愛人が出来てさらに帰らなくなって、妻のことは放ったらかしでした。それでも妻は僕を信頼してくれていたと思うんですけど、それが逆に自分を苦しめるようなところがありました」

末井昭末井昭氏

奥さんに悪いと思う気持ちですか?

末井「妻に嘘ばかりついていたので、その罪悪感ですね。愛人とホテルにいて朝帰りするときなんか、かなり辛かったんです。妻は仕事で徹夜したと思っているから、『体壊さないようにしてよ』とか心配してくれるんだけど、そういう優しい言葉が逆に怖いわけですよ。

じゃあ、嘘をつかなければいいじゃないかということですけど、本当のことを言ってしまうと、離婚するか愛人と別れるかどっちかになるんですけど、どっちもしたくないんです。優柔不断というか、どっちと別れるのも辛くて」