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子供のころから何度も「性的虐待」に遭った女が、我が子を捨てるまで

育てられない母親たち➀

ノンフィクション作家の石井光太さんが、自ら生んだ子供を手放す「ワケあり」の母親たちを密着取材していきます。彼女たちが「我が子を育てられない」事情とは?

我が子に対して恐怖を抱く母親

「小学1年の息子が私の胸を触った時、ものすごい恐怖を感じました。もう息子の下腹部を見るだけでダメです。怖い。この子がもう少し大きくなったら絶対に一緒に暮らせない。今でもそう思っています」

子供を捨てた経験のある江口弓枝(仮名、41歳)は、強い口調でそう語った。

小学生の男の子が甘えて胸を触ることなどあるだろう。だが、弓枝はそのことを許せないばかりか、息子の下腹部を見ることさえ嫌がった。

――きっとこの子は男となって自分を襲うのかもしれない。

わずか6歳の子供に対してそんな恐怖を抱いたのだ。

一体なぜ彼女はそんなふうに考えるようになったのか。なぜ息子を心から愛すのではなく、恐怖を抱くようになったのか。それは子供を捨てた理由と関係があるのか。

母親が実の子供を育てられず、手放すことになったケースを追うシリーズ『育てられない母親たち』。

第1弾は、この2児を産み、1児を捨てた弓枝の人生を見てみたい。

 

義父と義兄から性的虐待

徳島県の小さな町で、弓枝は若い夫婦の長女として生まれた。だが、両親は不仲から間もなく離婚を決意。母親が幼い弓枝を引き取ることになった。

小学校1年の時、母親は別の男性と再婚し、彼の家に移り住んだ。男性も離婚経験があり、息子が1人いた。新しい家では、義父、母親、義兄(小学6年)、そして弓枝の四人が暮らすことになった。

ここからが、悪夢のはじまりだった。

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新しい家で弓枝は、性的虐待を受けることになる。義父は母親の目を盗み、部屋につれ込んで弓枝を裸にさせ、いたずらをした。体を愛撫したり、キスをしてきたりするのはもちろん、股間を押し付けてくることも度々だった。

それを知ってか知らずか、義兄も同じようなことをはじめる。弓枝の部屋にそっと入ってきて服を脱げと命じ、局部をまじまじとのぞき込み、指などで触ったりしたのだ。

弓枝はそれが嫌で仕方がなかった。口に出せば、母親の幸せを壊すことになるし、自分たちが路頭に迷うことは明らかだ。幼い弓枝は性的虐待に耐え、秘密を1人で抱え込んだ。

性的虐待が終わったのは、小学五年生の時。母親と義父の関係が悪化して、離婚が決まったのだ。弓枝は母親につれられて家を出ていくことになった。