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自動運転車の開発競争―米国はなぜ、日独より中国を警戒するのか?

自動車産業は今、空前の転換期に

米国の連邦下院議会で先週、自動運転の開発や規制に関する法案が小委員会を通過した。今年秋の法制化を目指す。ドイツや日本、中国など競合諸国に先駆けて、自動運転車の国内市場を育成するのが狙いだ。

後れをとる法整備

背景には、ここに来て勢いづいてきた自動運転の実用化(製品化)がある。

ドイツのアウディは先日、「レベル3」と呼ばれる自動運転機能を同社の高級セダン「A8」に搭載することを発表。このアウディと並んで、米ゼネラルモーターズ(GM)も来年発売する「キャデラック」にレベル3の自動運転機能を導入する予定だ。

参照)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52150

レベル3は高速道のみで利用可能。また道路状況や天候に応じて手動運転への切り替えを迫られるなど完全な自動運転ではないが、それでも所定速度以下でハンドルやアクセル、ブレーキなどから手足を離しての走行が可能になる。

世界的にドライバーの要らない完全自動運転(レベル5)が実用化されるのは、早くても2020年以降になる見通しだが、アウディやGMが開発したレベル3でも、かなり本格的な自動運転と言えるだろう。

ところが、少なくとも現時点では、このレベル3に対応した法制度が整備されているのは(アウトバーンで有名な)ドイツだけと見られている。つまり(米国や日本など)先進諸国の多くでは、せっかく技術的には自動運転が可能になっても、それが路上で実際に使えず、宝の持ち腐れになってしまう恐れがある。

もっとも米国では既にフロリダやカリフォルニア、ミシガンなど幾つかの州で自動運転に関する法律が成立している。しかしGMやフォードなど米国の主要メーカーは、州毎に異なる州法よりも、米国全土で継ぎ目のない連邦法の成立を望んでいる。

今回の米下院議会による自動運転法案の審議開始は、そうした業界側の期待を受けての動きだ。また、これと同様の法案は、もうすぐ上院議会でもドラフトが提示される見通しだ(ちなみに日本では、今年中に自動運転の普及に向けた法整備の指針をまとめ、2019年の通常国会に法案を提出することを目指している)。

 

産業政策の側面が大きい

米国における、こうした法制化の動きは消費者目線というより、むしろ自動車業界に配慮した産業政策的な色合いが強い。ここ数年、多くの州政府や各州選出の議員らは、大手メーカーによる自動運転の開発拠点を地元に誘致しようと躍起になっている。

たとえば自動車産業の中心地デトロイトで有名なミシガン州では、32エーカー(約4万坪)に及ぶ広大な敷地に疑似的な市街地を建設し、ここでメーカー各社が自動運転の走行実験をできる環境を整えた。

同様の動きはバージニアなど他州にも広がっているが、いずれも主要メーカー各社が地元州に自動運転車の開発拠点、いずれは製造工場などを建設し、そこに新たな雇用と税収が生まれるのを期待してのことだ。

が、ここまでしても、せっかく開発された自動運転機能が(法律の未整備から)実際に路上で使えないようでは肝心のクルマが売れない。しかも、その実用化の時期が意外に早く訪れる気配が見えてきたので、米連邦議会では慌てて自動運転の法制化に乗り出した感がある。