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市場移転決定でも「豊洲エリア」がもう人気を取り戻せない明確な理由

 マンション市場の縮図がここにある
小池百合子・東京都知事が、ついに築地市場の豊洲移転を決定。2018年の秋ごろまでの移転を目指すスケジュールを発表した。

東京オリンピック開催に向かって、訪日客にとって観光の目玉となると予想される豊洲では、これからどんなことが起こるのか。『マンション格差』(講談社現代新書)の著者で、住宅ジャーナリストの榊淳司氏が見通しを語った。
 

豊洲に住んでいる方々は、築地市場の移転がようやく決まって、さぞかしほっとしたことだろう。

豊洲の土壌汚染に関する報道のトーンは、これから和らぐはずだ。「毒にまみれた地下水」のイメージも日々薄まっていく。いまの築地市場の活気が、全部ではないにしろ近隣エリアに移ってくるのだから、地域としても歓迎したいところだろう。

ちなみに、小池知事は築地跡地の再開発も同時に検討しているというが、まったくどっちつかずの政策で、愚の骨頂だと思う。

が、その問題はそちらの専門の方々にまかせるとして、本稿では、さんざん待たされた市場の移転が決まったことで、豊洲に林立するマンション群の資産価値がどんな影響を受けるのか、考えてみたい。

新しいマンションの「売り」が多い

まず、移転が豊洲にとってマイナスに働くということはない。いくらかのプラス材料になるだろう。ただし、大きなプラスは期待できない。

現在、豊洲エリアには1万2900万戸の分譲マンションが存在する。そして、この原稿を書いている時点で、不動産流通標準情報システム(略称レインズ、不動産業者が利用する物件情報システム)に「在庫」として登録されているのは260物件だ(7月26日時点)。

豊洲エリアに林立する高層マンション群豊洲エリアに林立する高層マンション群 photo by gettyimages

複数の業者が同じ物件を登録していることもあるが、一方でレインズに登録されていない売り出し物件も多い。そのことを踏まえ、豊洲にあるマンションの2%以上が売りに出ている、とざっくり言うことができるだろう。これは決して小さくない割合だと思う。

実は、この261件のうち36件は、ここ3年以内に豊洲新市場隣接エリアに完成した2つのタワーマンションからの売り出しだ。総戸数は2棟合わせて1660戸なので、約2.2%の部屋が現在売りに出ていることになる。

さらに言えば、今年に入ってのレインズ上での成約は13件。いずれのマンションも、1か月に1戸程度売れてやっと、というシビアな現実もある。

ふつうは新しいマンションほど、中古として売り出される住戸の数が少ないものだ。しかし、新市場に隣接する2つのタワーマンションは、相当新しいにもかかわらず、「売りたい」オーナーが多いということだ。なぜなのだろうか?