撮影:西﨑進也
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村上ファンド元代表に改めて聞く「インサイダー取引」疑惑の真相

激動の半生を振り返りながら
「村上ファンド」を立ち上げ、一世を風靡しながら2006年にインサイダー取引の疑いで逮捕された村上世彰氏が戻ってきた。自身の半生を描いた『生涯投資家』を上梓し、公の場で再び、ライフワークであるコーポレート・ガバナンス(企業統治)論を語るようになった。
今回のインタビューでも村上氏はガバナンス論を熱く語り、日本的ななれ合い経営の元凶として「株式持ち合い」を挙げた。法的に規制するのは難しいけれども、株主によるチェックで持ち合い慣行をなくしていくことは可能――村上節全開である。アクティビスト(物言う株主)のパイオニアであると自負しているからこそだ。

村上ファンド事件にも触れ、自分に下された有罪判決に対して残念な思いをにじませた。『生涯投資家』でも書いているように「僕にだけ適用された司法判断なのかもしれない」と振り返る一方で、「裁判をしていて驚いたのは、裁判中に裁判官が眠っていること。裁判を受ける側は人生がかかっている」と語ったのである。

『生涯投資家』は6月21日の発売直後から話題を集め、すでにベストセラーだ。1カ月足らずで5刷まで重版が決まり、発行部数は8万部を記録。「拝金主義者」「ハゲタカ」とレッテルを貼られた同氏の素顔を知って驚く読者が多いようだ
前編と同じく、<>内はインタビュアーである私の補足説明 / 撮影:西﨑進也

元祖アクティビストファンド

――日本企業のガバナンスで最大の問題は何でしょうか。例えば株式の持ち合いは全面禁止すべきですか?

村上: できることなら株式持ち合いはやめさせたほうがいい。経営者は持ち合い株の保有理由をいろいろ挙げているけれども、実は保身のために続けているケースが多い。とはいっても法的に持ち合いを禁止することは難しい。政府にできることは限られている。だから株主が追及することで持ち合い慣行をやめさせていくべきです。

少なくとも一定数以上の持ち合い株についてはきちんと理由を書かせたほうがいい。なぜ持っているのか、どれくらいの利回りを得ているのか、持ち合いを続けなければ相手企業と取引ができないのか――こういうことについて説明するということ。

(2015年に金融庁と東京証券取引所が導入した)コーポレートガバナンス・コードには持ち合い株について企業側に説明責任があると書いてある。だけどそこには強制力がない。

 

――旧村上ファンドは日本ではアクティビストファンド第一号と見なしていいですか?

村上: 日本では外資系も含めて村上ファンド以前にはアクティビストファンドはなかった。だから第一号です。

――日本で「元祖ハゲタカファンド」と呼ばれたのは米投資ファンドのリップルウッドです。1999年に旧長期信用銀行(現新生銀行)を買収して猛烈なバッシングに見舞われました。

村上: アクティビストは上場企業のみが対象です。リップルウッドはプライベートエクイティファンドだから上場企業はやらない。米スティール・パートナーズもアクティビストファンドとして日本に進出したけれども、日本での事業を始めるときに私のところに何度も相談に来ていました。

「本当はもっとリアリティがあった」

――私は記者として『生涯投資家』が描いている世界を直接取材していたので、非常に興味深く読むことができました。取材を通じて知っている話を村上さんの視点で読むのは楽しかったし、まったく知らなかった話を読むのはもっと楽しかったです。

まったく知らなかった話としては、村上さんがイトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんに怒られるシーンがあります。伊藤さんのことは個人的によく知っているだけに、なおさら生々しかったです。

村上: 伊藤さんとの一件については本当はもっとリアリティがあって、実は担当編集者からももっと書き込めと言われたんです(笑)。けれどもあまり詳しく書くわけにもいかなくて……。僕が本当に書きたかったのは第8章と第9章。そこで日本という国をどうしたらいいのか提言したんです。