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放送開始30年『世界の車窓から』作曲家の世界観はこうして作られた

心に沁み、血肉となったこの10冊

アメリカ先住民族に憧れて

読むと旅をしているような感覚を抱けたり、自分にはない独特な世界観を持つことができる本が好きですね。

1位の『かつて…』も、まさにそんな作品です。私はこの本の著者、ヴィム・ヴェンダースのロードムービー『パリ、テキサス』を見て以来、彼の大ファンなんですが、『かつて…』は映画監督で作家、そして写真家でもあるヴェンダースによるフォトエッセイです。

かつて…

アメリカやオーストラリア、南アフリカなど世界各国を旅した記録であり、廃れて、朽ち果てたような哀愁のある場所の写真がちりばめられているのが印象的です。

華やかな表の世界ではなく、ガイドブックには載っていないような裏側の世界は、旅をして初めて見ることができるもの。だからこそ、この本をめくると旅情を掻き立てられます。

 

映画の撮影のオフショットのようなものもあり、それがまた肩の力が抜けた、いい写真なんです。ヴェンダースがSX―70というポラロイドカメラで『都会のアリス』の現場の撮影をしているのですが、私もSX―70を買い、この『かつて…』と雰囲気がそっくりなプライベート写真集を作ったくらいです。

ヴェンダースのこの本にはすごく感化されて、アメリカの荒野も旅するようになりました。『ナバホの大地へ』の舞台となったアメリカの南西部にある先住民族ナバホ族の居留地「ナバホ・ネイション」にも何度も行っています。

ナバホの大地へ

この本の著者ぬくみさんは、ナバホ族の女性、アイリーンさんと出会い、彼女との交流を深めるにつれ、ナバホの伝統文化や歴史に魅入られていきます。西部開拓以前から変わらない風景の中で、自然と深く関わり、大地に根を張った生活の知恵で暮らしているナバホ族の生き方に私も感嘆しました。

文章もとてもナチュラルで読みやすいし、ページをめくっていると、アメリカの風にのってナバホの大地の香りが漂ってくるようです。

特に私が好きなのは、朝と晩の祈りの時間にナバホ族の男がパイプをくゆらすシーン。母なる大地、父なる空、神なる太陽に祈りを捧げ、東西南北へと煙をふかします。

パイプに用いられる植物は十数種類をも混ぜ合わせるこだわりのあるもの。ナバホ族にとって、パイプは欠かせません。朝晩の祈りの他、体の調子が悪かったり、悪夢にうなされたときにも回復を祈ってパイプを吸う。

煙草というと、日本では悪いイメージばかりですが、遠い地の民族にとってはこんなにも神聖で、生活に密接しているとは驚きでした。

羆猟師と私の共通点

5位の『羆撃ち』もナバホ族のように私にとって新鮮な価値観を与えてくれる作品です。この本を読むと、私自身が北海道の山の中で、息を潜めて、羆と対峙しているかのような感覚になる。

羆撃ち

著者の久保俊治さんは、大学を卒業後、就職せずに狩猟のみで生きていくことを決意したハンターです。

どうしても狩猟というと殺される動物が可哀想と思いがちですが、私はこの本を読んで、考え方が変わりました。というのも、久保さんは趣味で羆撃ちをしているのではなく、生活の糧として、生きるために猟をしているからです。

ナバホ族もそうですが、きちんと自然と動物に感謝をしながら命をいただいている。実際、久保さんは命に感謝して、羆の部位を余すところなく使います。