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アメリカ金融政策「利上げ」の次の話題はもっぱらコレだ

今後の市場動向とリスクを考える

FRBの資産圧縮計画

7月12、13日のジャネット・イエレンFRB議長の議会証言は、多くの市場関係者に安心感を与えるものとなった。そのため、この議会証言後の米国株式市場は底堅く推移している。

ここまでFRBは順調に利上げを進めている。現在、政策金利であるFF(フェデラルファンドレート)の誘導水準は1.00~1.25%である。FRBは年内にあと1回、来年は計3回の利上げを見込んでいるというのが現時点での市場コンセンサスである。

だが、ここのところ、米国の金融政策についての話題は、政策金利の引き上げから「資産圧縮(マネタリーベースの縮小)」に移りつつある。

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当たり前の話だが、FRBの資産圧縮が始まると、米国のマネタリーベースは減少局面に入っていくことになる。

「FRBの資産残高(もしくはマネタリーベース残高)は経済やマーケットにとって何の意味もない」という論者もいるが、事実としては、FRBは量的緩和(QE)政策実施後に何度か資産圧縮を試み、そして、それが原因で、マーケットや経済は調整局面を迎えた。

すなわち、FRBが資産圧縮を行うと資産市場が大きな調整局面に入り、それを回避するために、結局は、マネタリーベースを再び拡大させざるを得ない状況を繰り返してきた。ここまでのFRBの資産圧縮計画は必ずしもうまく行っていないのである。

なお、最近では、FRBの金融政策と政府の財政政策の間の相互依存関係から、FRBの量的緩和政策の効果を考察する論文が米国の経済学者から発表されるようになっている。

 

ところで、2016年には、FRBは、正式なアナウンスはしていないが、マネタリーベース残高を年間で5.4%減少させている。だが、2017年に入ってからは、利上げ局面にもかかわらず、逆にマネタリーベースは再び拡大基調で推移している。

今年6月時点のマネタリーベース残高は、昨年12月時点から8.2%増加している。もっとも、2016年のFRBのマネタリーベースの縮小は、債券の「リバースレポ」を用いていたので、FRBの資産残高自体は減少していなかった。

そこで、過去のマネタリーベースと株価の関係を考えると、2017年に入ってからの予想外のマネタリーベースの拡大が、ここまでの堅調な米国株式市場を支えてきた可能性がある。従って、FRBがいつ資産圧縮を通じてマネタリーベースを縮小させていくかは、今後の市場動向を見極める上で重要だと考える。

FRBはすでに、資産圧縮をどのようなプロセスで進めていくかについて発表している。だが、いつからそれを始めるかはアナウンスしていない。7月12、13日のイエレン議長の議会証言においても、その開始時期は明らかにされなかった。

むしろ、イエレン議長は、議会証言で米国の将来のインフレ動向についての不確実性を指摘した。すなわち、イエレン議長は、「FRBはあくまでも経済状況を冷静に観察しながら政策を遂行していくのであって、『利上げ・資産圧縮ありき』で金融政策運営を行うことはしない」ことを伝えたわけだ。

イエレン議長は、この議会証言の場で、どちらかといえば、「タカ派寄り」に傾斜しつつあるのではないかと懸念されていたFRBの金融政策スタンスを「ハト派」寄りに修正する役割を演じたと思われる。その意味で、ここまで、FRBは「市場との対話」を巧みに実施しているといえよう。

 
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