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のん、小出恵介…芸能人と事務所の「契約問題」が起きる理由

音事協「統一契約書」の真実(後編)

のん(能年玲奈)、SMAP、そして小出恵介…世間を騒がせてきた芸能人たちの「契約」はどうなっているのか? 前編に引き続き、芸能界最大の組織・音事協が定めた「統一契約書」の中身を吟味してゆこう。

芸能プロダクションの仕事とは

日本の芸能プロダクションは、アーティストやタレントの単なる「紹介業者」や「派遣業者」ではない。彼らを育て、その「商品価値」を最大化することを目指している――。

こうした芸能関係者の認識に基づいて、1989年4月、「専属芸術家統一契約書」が完成した。以降、この統一契約書を元に何度か改訂が行われている。

筆者の手元にある統一契約書の中では、プロダクションの業務内容について具体的にこう規定されている。少し長くなるが引用しよう。条文中の乙が所属アーティスト、甲がプロダクションである。

〈1.乙の芸術家としての才能、資質及び技能を把握し、乙に対し、それらの習得又は向上に必要かつ有益なレッスン、キャリア開発その他の機会を提供すること。

2.乙に対し、出演その他の実演の機会、又は著作その他の創作活動の機会を提供すること。

3.乙に関わる商品その他コンテンツの制作、販売、配信若しくは貸与等を企画し、又は自らこれを行うこと。

4.乙にかかわる各種の企画、イベント、プロジェクト、役務提供その他の事業を企画し、又は自らこれを行うこと。

5.プロダクション業務に必要な契約を甲の名において第三者との間で締結するとともに、甲の名においてその対価を請求し、これを受け取ること。

11.法的紛争の予防、法的リスクの回避その他乙の芸術家業務に伴う法的管理を行うこと〉

 

これらの条文の意図について、音事協顧問弁護士で、統一契約書作成を主導した錦織淳はこう説明する。

「一言で言うならば、アーティストが余計なことを考えず、プロダクションが全ての業務を包括的に請け負う。アーティストは歌唱力、演技力などを磨くことに専念する。同時にリスクもプロダクション側がとる。リスクというのは、育成への資本投下を行い、また売り出したとしても失敗するかもしれないということです。

近代プロダクションの本質とは、アーティストから様々な包括的権利譲渡、包括的権利許諾を受けるということです。個別にいちいちアーティストに許諾を受けなくとも、プロダクション側がどのように売り出すのか戦略を立てることができる」

不祥事で巨額の賠償請求をされたら?

この「包括的専属契約」という考え方は、錦織が言うようにアーティストが「本業」に専念できる環境を整える基礎となる一方で、双方に強い結びつきを要求する契約とも言える。

統一契約書の第4条(専属芸術家業務)では、契約の及ぶ範囲を、アーティストの「表現活動全て」と規定している。

のんこと能年玲奈の場合、契約期間中の2015年1月に、能年が「株式会社三毛andカリントウ」という個人事務所を無許可で設立したことを、所属事務所のレプロが問題視した。