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英国王室「異例の勲章授与」とブレグジットの深い関係

因縁の「ジブラルタル問題」とは

スペイン国王への「破格の厚遇」

2017年7月12日の夕刻。ロンドンのバッキンガム宮殿で盛大な晩餐会が開かれた。

この日の主賓は英国を公式訪問中であるスペインのフェリーペ6世国王とレティシア王妃。美人の誉れ高い王妃は鮮やかな赤のドレスに、ブルボン家の白百合をあしらったダイヤのティアラで登場した。

夫妻をもてなすエリザベス2世女王は、スカイブルーのアクセントの付いた白のドレスに巨大なアクアマリンのティアラとネックレス。この宝石は1953年の戴冠式の折にブラジル大統領と国民からプレゼントされたものだ。

またこの日の晩餐会には、女王の孫ウィリアム王子の妻キャサリン妃も出席しており、女王から借りた豪奢なダイヤとルビーのネックレスが特に注目を集めていた。

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しかしこれら女性王族たちのファッション以上に注目すべきなのは、190センチを優に超える長身のフェリーペ国王が佩用(はいよう)する勲章である。

それは鮮やかな青い大綬(だいじゅ)から「ブルーリボン」の愛称で知られる、英国最高位のガーター勲章だった。晩餐会に先立ち、この日の午後早くに宮殿で軽めの午餐を摂った直後に、女王から直々に授与されたばかりの栄誉である。

1348年にイングランド国王エドワード3世によって創設されたこの勲章は、現存する栄誉としてはヨーロッパでも最古のものであり、歴代のスペイン国王にも贈られてきた。フェリーペの父フアン・カルロス国王も1988年に授与されている。

 

ところがここ近年の慣例では、君主に即位したばかりの人物が英国を公式訪問した場合には、ロイヤル・ヴィクトリア勲章頸飾(チェーン)という別の勲章をまずは授与され、その数年後に女王が答礼訪問を行った際などに、ガーター勲章があらためて与えられるというのが定式化していた。

フアン・カルロス国王の場合にも、1986年の訪英時にまずは「チェーン」を授与され、2年後のエリザベス女王の答礼訪問時に「ブルーリボン」を与えられていた。

しかし今回のフェリーペ国王は在位わずか3年で、チェーンは与えられずに、いきなりブルーリボンを贈られたのである。これは「破格の厚遇」といっても過言ではない。

英国には、1月と6月に叙勲が発表される「勲章(オーダー)」は現在9種類あるが、そのうち6種類は君主が独自の裁量で与えることができるものである。

21世紀の今日とはいえ、いかに時の政府が強く授与を要望したとしても、君主にはそれを拒否することができる。王室が「栄誉の源泉」といわれるゆえんである。このガーター勲章も670年に近い歴史のなかで、つねに君主の裁量によって最終的には授与が決定されてきた。

エリザベス2世は歴代のなかで最も儀礼や慣習に厳しい君主である。その女王が、近年の慣例を破ってまでフェリーペ6世にブルーリボンを与えた真意。

そこにはブレグジット(英国のEU離脱)を見すえ、スペインとの間の「ジブラルタル領有問題」を穏便に解決していきたいという、彼女の並々ならぬ意思がかいま見られるのである。