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この夏、「第七の大陸」実在の証拠が掘削される可能性

海底地質学者が真面目に語る

海に沈んだ大陸の伝説。人々を魅了してやまないこのテーマに今年、新たな結論が出ようとしているのをご存知か。発売されたばかりの注目の書・『海に沈んだ大陸の謎』の著者である佐野貴司博士が、「第七の大陸」の可能性を徹底解説!

伝説の「ムー大陸」と「アトランティス大陸」

ムー大陸伝説」を、一度は耳にしたことがあるだろう。

地球に存在する大陸は、ユーラシア、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、オーストラリア、そして南極の6つだ。もしムー大陸が存在したのならば、これは海に沈んだ「第七の大陸」と呼べる。

だがじつは、海に沈んだ「第七の大陸」の候補は、ムーだけではない。地質学者の間では、かつて太平洋に存在したといわれる「パシフィカ大陸」や、94%が海の下にある「ジーランディア大陸」が注目を集め、実際に研究対象となってきた。海底地質の研究に携わる立場から、こうした「第七の大陸」を科学者たちが研究した結果、これまでにどのような成果が得られたかをご紹介しよう。

作家のジェームズ・チャーチワードは1931年に出版した『失われたムー大陸』という著書の中で、太平洋に沈んだ「ムー大陸」と、大西洋に沈んだ「アトランティス大陸」の伝説を紹介している。

2つの大陸には高度な文明が栄えたが、約1万2000年前に大陥没が起き、大洪水に飲まれて海へと消えたというのである。とくにムー大陸は広大だったとされ、太平洋の面積の半分以上を占めていたそうだ(図1)。

ムー大陸の概要チャーチワードの紹介したムー大陸とアトランティス大陸の想像図(チャーチワードの図を簡略化)

46億年間もの地球の歴史を扱う地質学の世界では、「1万2000年前」といえば「つい最近のこと」と受け止められる。10億年前の出来事を調べるのにくらべれば、1万2000年前の出来事を地質学的に検証するのは簡単だ。海底の地層を調べ、海に沈んだ大陸の痕跡を検出すればいい。

ただ、その検証のためには、「大陸」と通常の「海洋底」との違いを知っていなければならない。さらに、大陥没によりつくられる地層についての知識も必要となる。

「大陸」の特徴をひと言で表現すると「複雑」だ。一方の「海洋底」は「単純」だといえる。

海洋底の大部分は、玄武岩のみからできていて均質なのに対し、大陸は花崗岩、角閃岩、グラニュライトなどのさまざまな岩石が、複雑に積み重なった土台からつくられている。

もしムー大陸のように広大な大陸が陥没したのならば、複雑な土台がバラバラに割れて海底へ落ち込んだ地層が確認されるはずだ。

では、ムー大陸やアトランティス大陸があったとされる場所に、そうした痕跡はあるのだろうか? 残念ながら、いまのところ太平洋にも大西洋にも、大陸が大陥没してつくられた地層は発見されていない。ところが、「第七の大陸」を探す旅は、ここでは終わらないのだ。

地質学者を魅了した「パシフィカ大陸」

約1万2000年間という「つい最近」陥没した大陸は見つかっていないが、1億年以上前に目を向ければ、大陸が沈んでなくなったことは、実際にありえる話だ。

事実、海に沈んだ大陸を連想させる地形は、世界中の海底に存在する。これは「巨大海台」と呼ばれるもので、太平洋にとくに多く分布している。

巨大海台のひとつが、日本から約1500km東の太平洋に存在するシャツキー海台だ。

 

これは日本の国土とほぼ同じ面積を持つ台地で、もとは1億5000万~1億3000万年前の大規模噴火によってつくられた超巨大火山。最近の地質調査により、このシャツキー海台は、1億年以上前には海面から頭を出した「陸」であったことが明らかになってきた。

「シャツキー海台などの太平洋に散在する巨大海台は、もともとはすべて一ヵ所に集まって大陸を形成していた」と提案した地質学者らがいる。スタンフォード大学(アメリカ)のヌル教授とベン・アブラハム教授である。

彼らは1977年に、『失われたパシフィカ大陸』というタイトルの論文をイギリスの著名な科学雑誌に掲載した。タイトルはチャーチワードの『失われたムー大陸』にちなんだものだ。この説は多くの地質学者を魅了し、1980年代以降、パシフィカ大陸の存在を検証する研究がおこなわれてきた。