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フェイスブックは、あなたが隠してるはずのことまで知っている

巨大データ企業の秘密

ジェフ・ベゾスとともに私たちの「買い物の常識」を変えた科学者が、巨大データ企業の秘密を暴いた本が話題になっている。その日本語版『アマゾノミクス』の刊行に合わせ、翻訳を手がけた土方奈美さんに、今この瞬間も私たちのデータを集め続けている巨大データ企業の実像を聞いた。

ベゾスの右腕

昨今「ゲス不倫」が大はやりだ。週刊誌では昔ながらの密会写真に加えて、芸能人のソーシャルネットワーク上の私信までもが証拠として世間にさらされる。

とはいえ他人の不品行に眉をひそめていられるのも今のうちかもしれない。公開されていないだけで、私たち一人ひとりの日常生活も驚くほど詳細に記録されている。

インターネット上での検索や位置情報サービスの利用、フェイスブックでの「いいね!」やインスタグラムへの写真の投稿など、意識的、無意識的に残すデジタル痕跡を通じて、あなたがいつ、どこに行ったのか、どんな人とどれくらい親密につきあい、何に関心を持っているかがデータ会社に把握されている。

ただ、一人ひとりについて蓄積される膨大なデータは、われわれの日々の意思決定の質を高め、人生を豊かにする可能性も秘めている。

ソーシャルデータの恩恵を、それを生み出す個人が享受するためには何が必要なのか。個人の、個人によるデータを、どうすれば個人のためのデータにできるのか。それを明らかにするのがこのたび刊行された『アマゾノミクス』である(原題は『Data For The People』)。

著者のアンドレアス・ワイガンドはアマゾンの元チーフ・サイエンティストで、創業者のジェフ・ベゾスの右腕としてデータ戦略を担った人物だ。顧客本位のデータ活用はアマゾンの飛躍的成長の土台となり、eコマースの新たなスタンダードとなった。

アンドレアス・ワイガンドアンドレアス・ワイガンド〔PHOTO〕Social Data Lab

アマゾン退社後もスタンフォード大学などで教鞭をとるかたわら、アリババ、ゴールドマンサックス、BMWなどのビッグビジネスから婚活サイトや旅行サイトまで、幅広い企業のデータ戦略を指南してきた。まさにデータ会社の表も裏も知り尽くした、ソーシャルデータ分野の世界的権威である。

アマゾノミクス

本書は2017年1月にアメリカで刊行されて以降、ニューヨーク・タイムズ紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙で高く評価され、ノーベル賞経済学者のダニエル・カーネマンも「秘密なき世界にどのような機会が潜んでいるかを説得力をもって描いている」と賛辞を寄せている。

 

厄介なソーシャルデータ

本書の内容は二部構成になっている。

まず前半では、今日われわれについてどのようなデータが収集・分析されているのか、つまり「ソーシャルデータ」とは何か、データ会社はそれをどのように精製し、活用しているかを解説する。それを理解することが、ビッグデータの時代を生きる者の必須能力である「情報リテラシー」を身に着ける第一歩だと著者は説く。

データ会社が収集するソーシャルデータは、「クリック」「つながり」「コンテクスト(背景)」の三種類に大別され、それぞれがわれわれの人格を赤裸々に伝えている。

たとえばフェイスブックは、カップルが交際中であることを公表する100日前から、二人のネット上のやりとりは着実に増加すること、そしてステータスを「交際中」に変更したとたんにフェイスブック上のやりとりは一気に減少することを把握している。当事者が「交際中」であると認めていなくても、フェイスブックにはわかっている。

オンライン映画レンタルのネットフリックスも同じで、ユーザーがインテリぶって小難しい映画に星五つの評価を与えても、映画が始まって数分後に視聴を中断していれば、そちらのほうをより正直な評価だとアルゴリズムは認識する。

ソーシャルデータはわれわれが自覚していない本音まで明らかにしてしまう。