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日本のCMの「炎上狙い」海外なら一発アウトです!

「やらしい」表現は響かない時代
河尻 亨一 プロフィール

「消費者をなめてる感じ」が伝わる

その上で日本国内のこととして考えると、これはどう捉えるべきなのだろう? ネット上の意見を見ると、批判的な意見がある一方で肯定的に捉えるものも意外と多い。

実際、宮城県の観光PR動画はアクセスを伸ばし、本記事執筆の段階でYouTubeの再生回数は125万回を越えている。コメントはできなくなっているが、評価は「いいね」の比率が「よくないね」を少し上回っているようだ。

「絶頂うまい出張CM」と「涼・宮城の夏」に関して私の率直な感想を述べると、最初にハフィントンポスト日本版の記事などを読んで知ったときは、「一体どんなにひどい広告なんだろう?」と思って見に行ったのだが、「まあ、別に面白いとも思わないけど、かと言ってそこまで騒ぐほどのことだろうか…。海外だったら一発撃沈だろうけど」というものだった。

「現代ビジネス」に執筆した五輪エンブレム盗作騒ぎのときとは異なり、今回は擁護派でもないのだが、私自身企業コンテンツも制作している立場から、むしろ現場の心情も慮られるというか、「たぶんあーなって、こーなって、最終的にこうなっちゃったのかな…」と、制作の裏側までなんとなく想像してしまった。

視聴者から見れば「バカじゃね?」で瞬殺されてしまうコンテンツでも、実際にそれを作るプロセスはなかなかハードなものがある。

だが、それは業界目線な40男の見方だ。この動画にふつうに接する人たち、特に女性のリアクションは私にはわからない。

そこで仕事仲間の20~30代女性4人と男性1人(デザイナーや広告業界以外の営業職、経営者)に2つを見てもらって率直な感想を求めたところーー

 

「両方とも、あー、あるよねって感じ。特に嫌悪感もわかないけど、バカじゃない? とは思います」(20代女性)
「(宮城県のCMを)見ていると、画面から心がすーっと遠ざかっていく音がしました」(20代女性)
「でも、逆に男性をこういう風に(性的対象物として)描いたCMもありますよね。そういうのは意外と炎上してない気もして」(20代女性)
「品がない。消費者をなめてる感じがします。ただ、過剰に取り締まるのもどうかと。それも寛容でないというか」(30代女性)
「僕も特に目くじら立てるほどのものでもないと思うけど、CMとしてこれをやるのはどうなんですかね?」(30代男性)

ーーとのことであった。ポイントは2つ。まず「CMとしてこれをやるのはどうか?」という点。

個人差はあれど性欲や食欲は男性であれ女性であれ人間だれしも持つもの。ゆえに、"上"と"下"の二つの本能に訴えかけるコミュニケーションは、理解が早いし広がりやすい。低予算であっても効果は期待できる。

筆者は「エロ」はあらゆる表現の源泉だとも考えるので、それ自体を簡単に否定する気にはなれない。男性社会の負の側面の反映として、偏りのあるいびつな形で女性が描かれることはおかしいと思うし、下品路線を狙うにせよ、上品トーンを目指すにせよ、表現そのものがキチンと計算されてないのはいただけないが、エロ表現にも市民権はあると思う。

だが、ひとつ指摘しておきたい。広告は「エロそのもの」を描くことが目的ではない。その目的はあくまで商品の認知度を上げたり、さらに言えば「モノを売る」ことである。そのためのトリガーとしてイージーかつ露骨に性的な感情にアピールするのはどうなのか? 別の意味で"やらしい"気もする。

商品や企業の特性によっては、そうせざるをえない場合もあると思うが(性に直結する商品もあるので)、今後基本的にはこういった"格安"な欲望喚起の手法は衰退していかざるをえないのではないか? 昔と異なり、見る人の共感も得づらくなっているからだ。