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日本のCMの「炎上狙い」海外なら一発アウトです!

「やらしい」表現は響かない時代
河尻 亨一 プロフィール

「♪女の子は何からできているの?」

次はロシアでオンエアされたコマーシャルをご紹介しよう(企画はオランダの会社)。こちらも「国際女性デー」に公開されたもので、先ほどのキャンペーンに近い空気を持つものであるが、スポンサーはナイキ。こんなCMだ。

CMの舞台となるのはクラシカルな劇場。大勢の観客が見守る中、一人の女の子がステージで歌い始める。「♪私たち女の子は何からできているの? 花? 指輪? 噂話? マーマレード?」。

この歌はロシアでは有名な童謡らしく、歌詞は「(男の子は男らしく)女の子は女らしく」と男女の役割の違いを子供に教えるものとなっている。

立派な身なりをした大人たちの前で、女の子は最初は素直に歌っているのであるが、突然劇場の後部ドアが開き、彼女の前にロシアの著名女性スケーターが現れる。

その姿を見た女の子は一瞬躊躇して何かを考えたのち、「♪(本当は)女の子は鉄の意志や自分を高めようとする努力、戦いから出来てるのよ」とアドリブで替え歌を歌い始め、会場はざわめきーーという展開だ。オチが気になる方は動画をご覧ください。

 

「絶対やっちゃダメ」な広告とは

P&Gセミナーの様子

ほかにも今年のカンヌでは、女性の権利向上や活躍を鼓舞しようとするキャンペーンがグランプリや金メダルを多数受賞するなど高く評価されていた。

冒頭でもふれたように、そういった趣旨のセミナーも多く開催され、例えば上の写真は「Creativity and Resposibility(表現と責任)」と題されたP&Gによるセミナーのひとコマである。

Facebookの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグも登壇したこのセミナーは、現在のマーケティング業界において「いかに女性の人材登用が進んでいないか」をデータを上げて解説したのち、広告における過去の女性蔑視的表現や、女性を男性視点からの性的対象物(Sexual objectification)として描いた事例をピックアップ、それらを徹底的に批判した上で「いま人々に望まれているもの」を紹介する内容であった。

つまりこの写真に写っているような広告は、「今後は絶対やっちゃダメ」というわけである。

家庭用品の世界最大メーカーであり、ユーザーの女性比率が高いP&Gが、先頭に立ってそのメッセージを発信することはうなずけるし、大変中身の濃いセミナーではあったのだが、その場の空気たるや、男性である筆者としては正直コワいようなものさえ感じるひとコマであった。

しかし、まず事実として直視しなければいけないのは、この動きは現在の広告業界におけるトレンドであり、ジェンダー・イコーリティの観点は"グローバル・ルール"としてすでに定着しつつあること。

カンヌは3年くらい前からこのメッセージを明確に打ち出すようになっており、フェスティバルの運営を見ても、例えば2013年には20%に過ぎなかった女性審査員の比率が、今年は43.5%にまで上昇している。もしかするとそういったことが受賞結果にも反映されているかもしれない。

それを踏まえつつ、ここからは日本の広告の現状も少し考えてみたい。