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薬物依存症治療のプロは清原和博のいまをこう見ている

2つの不安材料

清原氏の驚くべき変貌

元プロ野球選手の清原和博氏が、昨年5月に執行猶予判決を受けてからはじめて、雑誌(『Number』)のインタビューに答えた。

その表紙には髪を七三に整え、紺色のスーツに涼しげな水色のネクタイを締め、すっきりと痩せた姿で登場し、誰もがその変貌に驚いたことだろう。

かつての姿と言えば、丸々と太って黒光りしたスキンヘッドに、上下白のスーツ、ゴールドのネックレス。道ですれ違ったとすれば、正直誰もが目を合わせずに通り過ぎたいような、そんないで立ちだった。

人を見た目で判断してはいけないが、かつてのそんな姿の彼は、絵に描いたような「ワル」そのものであったし、逮捕されたときには誰もが驚きはしたが、その一方で「やっぱり」という感想も多く聞かれた。

しかし、今の彼のこの姿を見ると、誰もが「反省しているな」と感じることだろう。これはとても大事なことである。

もちろん、髪型や洋服を変えただけで立ち直れるほど、薬物は甘くない。しかし、彼自身、外からは見えない反省の気持ちを、このように自らの姿に表して、その決意表明をしているのである。

 

「薬物にはかなわない」が出発点

さて、インタビュー記事を読んでの感想であるが、まずとても真摯に率直に話をしているという印象を受けた。そして、そのあとの友人や後輩たちのインタビュー記事と併せて読み進むにつれ、何度も胸が熱くなった。

まず彼は、現在も週1回、専門病院での治療を受けていると語っている。これまでも芸能人が逮捕され、その治療の様子が報じられることもたびたびあったが、正直首を傾げるような内容のものが少なくなかった。

しかし、文面から判断するに、清原氏が受けている治療は、きちんとした適切な治療プログラムであるように判断できる。

内容としては、薬物依存症に対する心理教育、薬物欲求への対処スキル、周囲のサポートの活用、孤独や不安などネガティブ感情への対処、薬物に対する認知の変容、罪悪感への焦点づけ、定期的な尿検査などが紹介されているが、どれも重要な治療要素である。

現在日本中の刑務所では、薬物受刑者を対象に「日本版マトリックス・プログラム(J-MAT)」というものを実施している。

これは認知行動療法という心理療法に基づいたエビデンスのある治療プログラムであるが、元来、米国で開発された最先端のプログラムを元に、私自身が開発したものである。

清原氏が受けている治療プログラムは、このJ-MATとほぼ同じような構成であるように見受けられた。

そして、何よりも重要なことは、彼自身が治療内容を咀嚼し、十分に理解したうえで実践している様子がうかがえたことである。インタビューの中では、自分が受けている治療内容を適切に理解したうえで紹介し、自分自身の受け止め方などを、とても的確に話していた。

さらに、これまで球界の大スター、球界の番長として、豪快なタフガイのイメージに彩られてきた彼が、自分の弱さを認め、それを率直に向き合って、心情を素直に吐露している様子が特に印象的だった。

薬物依存症の治療は、自分が薬物に負けたことを認めることから始まると言っても過言ではない。「いつでもやめられる」と言っているうちは駄目で、逆説的ではあるが、「自分は薬物にはかなわない」と認めて初めて、薬物に打ち克つことができるのだ。