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国際・外交

「東大数学科出身」TPP交渉に登場した、異色の外交官の辣腕

アメリカ説得のキーマンか

異色の「理系交渉官」を最前線に投入

7月12~13日の2日間、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加11カ国(通称、TPPイレブン)の事務方トップ会合が神奈川県箱根町のザ・プリンス箱根芦ノ湖で開催された。

政府はこれに先立つ7日、事務方トップであるTPP政府対策本部首席交渉官に梅本和義前駐イタリア大使を任命した。

2014年、国連次席代表時代の梅本氏2014年、国連次席代表時代の梅本氏(Photo by Getty Images)

梅本氏は、外務官僚としては珍しく東京大学大学院理学系研究科修士課程(数学専門課程)出身。

1977年入省後、アジア大洋州局北東アジア課長、総合外交政策局総務課長、北米局長、官房副長官補、国連次席代表を歴任、2014年8月に駐イタリア大使に就任。筆者は、同氏が北米局日米安全保障条約課長時代から二十余年の長いお付き合いである。

 

これまでのTPP首席交渉官は鶴岡公二・現駐英大使(76年入省)、大江博・現経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部大使(79年入省)であり、年次が逆転したことなる。

同氏の温厚な性格は省内屈指で、理系らしい理詰めの交渉力は高く評価されている。
米国抜きのTPPイレブン交渉は、11月にベトナムのダナンで開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議までに「日本がリーダーシップを発揮し、早期発効に向けた議論を主導する」(安倍晋三首相)ことが求められている。

そこで同期の杉山晋輔外務事務次官が梅本氏に交渉の最前線復帰を口説き、同意を得て首相官邸側の承認を経て発令された。

そして大江氏がパリの駐OECD大使に転出後、首席交渉官を兼務していた片上慶一外務審議官(経済・80年入省)は、梅本氏の後任の駐イタリア大使に就任する。

渋るベトナム、マレーシアを口説く

今回のTPPイレブン首席交渉官会合で最大の難題は、実は対ベトナム、マレーシアとの折衝だった。

長くて厳しい交渉の末、2年前の10月にニュージーランドで米国を含めたTPP12カ国閣僚合意が実現した。

ところが1月にトランプ米大統領がTPP離脱を決定したことから、ベトナムとマレーシア両国が対米輸出拡大を期待して自国の規制緩和で大幅に譲歩したため、関税の見直しなどニュージーランド合意内容の大幅修正を求め、早期発効にも難色を示すようになった。