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上司の「お前がエロくないからやる気出ない」発言がまかり通る不条理

あなたの認識は本当に大丈夫か

「セクハラCM」に見る働く男の妄想

「頂」というビールのインターネットCM動画を見て、真っ先に思い浮かべたのは、こういうCMを作る広告会社、そしてメーカーで働く営業女性たちのことだった。そういう会社の意思決定の場に、まだ女性が少ないからこんな動画が作られる。そういう面もある。

でも、割合は少なくても、女性たちは確かにそこにいるのだ。彼女たちは、なんともいたたまれない心境で世の中の炎上を見ているのではないかと思った。なぜなら、動画に出てくる「妄想」とされた女性に対するセクシャルな目線は、時に、働く彼女たちにも押し付けられているからだ。

そして彼女たちは、既に感覚を麻痺させてその通りの女性を演じたり、あるいは演じきれないことでその心身をすり減らしていたりする。

サントリー「頂」インターネットCM動画より(現在は削除されています)

現代ビジネスで「『コイツには何言ってもいい系女子』が密かに我が身を切り刻んでる件」の記事を書いてから、反響が大きかったため、ハラスメントについての実態調査をはじめた。主に企業で働く女性たちが、具体的にどのようなシーンでどのような想いをしているのかを取材しはじめ、最初にいだいた感想は、次のようなものだった。

「それって、今の日本? 20年とか30年前じゃなくて?」

「企業としてはダイバーシティとか言ってるけど、その職場大丈夫……?」

 

正直なところ、驚きを隠せなかった。1999年には男女雇用機会均等法改正によって、企業にはセクハラ配慮義務が法制化された。2006年にはさらにセクハラ防止措置が企業の義務となっている。これを読んでいるあなたも、おそらくコンプライアンス研修、セクハラ研修などを何度か受けたことがあるに違いない。

それでも、悪質なハラスメントが、日常的に起こっている。さすがジェンダーギャップ指数144ヵ国中111位(2016年)の国だけのことはある。女性活躍推進法施行などを受け、「女性管理職を増やす」と目標を掲げている企業は多いが、その前に、最低限のハラスメント環境を正すのが先決だと感じた。

ただ、私自身、この取材をしながら、「まじで! ひどい!」「ありえない、そんな上司」と一刀両断する前に、少し立ち止まる必要があった。私が話を聞いてるのは被害者の女性で、彼女たちの説明する背景と状況、そして受け止め方からすれば「まじで! ひどい!」「ありえない」になる。

だが、反対側、つまり彼女たちにハラスメントと思われる言動をしている側からみた風景はどうだろうか。おそらく問題が深刻なのは、ハラスメントをしている側は、している認識がない、相手が傷ついているなど想像も及んでいないということだ。