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海老蔵親子の「宙乗り」に大喝采! 歌舞伎の本質がここにある

「現実の家族」と「虚構の舞台」の融合
中川 右介 プロフィール

歌舞伎にも近代演劇として作られ、演じられるものもあるが、今月の「駄右衛門花御所異聞」は、2017年の新作でありながら、近代以降の演劇の原理では作られていない。

海老蔵が歌舞伎座に座頭として出るにあたって考えたのは、昔ながらの歌舞伎を昔ながらの作り方で、しかし、最新の舞台技術を駆使して飽きさせないようにする、というものだったのだろう。

「古典歌舞伎をつくる才能がある方々に集まっていただき、新たなもの、古典でも新しいもので、面白く、誰にでもわかりやすく、そして後世に残る作品をつくる」とインタビューで答えている(http://www.kabuki-bito.jp/news/4109)。

ここにいたるまでに、海老蔵と歌舞伎座に何があったのか。

歌舞伎座〔撮影〕著者

2017上半期の海老蔵

1月の海老蔵は、新橋演舞場で市川右近の市川右團次襲名披露興行を、猿之助とともに主宰した。

数年前から右團次は海老蔵と同座することが多かったが、この興行によって海老蔵の一門となったことが明白となる。そして猿之助もこれを祝ったのである。円満な実質的移籍といっていい(他の芸能人が所属事務所を移るような意味での移籍ではないので、「実質的」とした)。

この月は右團次の子も市川右近を襲名し、「初舞台」となった。

2月の海老蔵はEXシアター六本木での六本木歌舞伎の二回目で「座頭市」。寺島しのぶが相手役、市川右團次が敵役をつとめた。

一方、2月の歌舞伎座は「猿若祭」と銘打たれ、中村勘九郎の息子、勘太郎と長三郎が「門出二人桃太郎」で「初舞台」となった。

3月は海老蔵が歌舞伎座に出て、歌舞伎十八番の「助六」。歌舞伎座新開場の2013年以来の助六だったし、3月に歌舞伎座に出るのも珍しいことだった。そして雀右衛門が女形の大役の揚巻をつとめ、ある意味では襲名披露のひとつとも言えた。

 

4月の海老蔵は自主公演「古典への誘い」で全国各地14の劇場をまわった。

4月の歌舞伎座では、昨年6月に続いて猿之助が幸四郎・染五郎の相手役をつとめた。

5月の歌舞伎座は毎年恒例の團菊祭。海老蔵が必ず歌舞伎座に出るのはこの5月だけだ。そして、いまや海老蔵と菊之助が共演するのも5月の團菊祭だけとなり、今年は昼の部は「吉野山」で二人が舞台に並び立ち、夜の部は「伽羅先代萩」で共演ではなく競演した。菊之助は政岡、海老蔵は仁木弾正。

だがこの月も話題の中心となったのは子供だった。尾上菊五郎の孫、寺島しのぶの息子、寺嶋眞秀の「初お目見得」である。

さらに、坂東彦三郎家の三代・四人同時襲名もあった。新しい彦三郎の子が亀三郎を襲名しての初舞台もあったのだが、ちょっと霞んでしまった。

6月の海老蔵は渋谷のシアター・コクーンでの自主公演ABIKAIで、「石川五右衛門外伝」。そして――その最中に悲劇があった。

6月の歌舞伎座も猿之助は幸四郎、染五郎と共演した。

このように海老蔵は毎月、どこかに出演している。このあとも、それが続く。