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「人の話は最後まで聞け」というマナーは、世界の非常識だった

だから世界のビジネスで勝てないのだ

「世界MBAランキング」で、直近2年連続で世界第1位、名実ともに世界最強の経営大学院「INSEAD(インシアード)」。世界80か国以上から学生が集まり、グローバル性、多様性を大きな特徴とするこの大学院、いったい何がそれほどすごいのか。

いまやビジネスパーソンのバイブルとも呼ばれる大ベストセラー『最強の働き方』(東洋経済新報社)『一流の育て方』(ダイヤモンド社)の筆著者で、インシアードの修了生でもあるムーギー・キムさんをガイド役に、「世界最強の経営大学院」が生み出す人材たちの「最強の仕事術」に迫る。《これまでの連載はこちら

日本流のやり方は一切通用しない

「おいおい、いいからケンカはやめてくれ!そう感情的になるな!」

 「何を言ってるのムーギー、私たちはケンカなんかしてないわ。ヒートアップした議論をしているだけ。カルーナ(インド人の同僚だ)、私たち、全然友だちよね?」

インシアード在学中、私はこんなシーンにしょっちゅう出くわした。世界から集まるビジネスリーダーたちはみな、議論をするとき、政治だろうが宗教だろうが、日本だとセンシティブで話さないか、末永く炎上するトピックに関し、それはそれは活発かつオープンに議論をする。

最近も、イギリスのEU脱退やトランプの大統領選挙について、賛成派、反対派が、遠慮も包み隠しもなく、大っぴらに議論する場に居合わせた。パキスタン人の友人はアメリカの中東政策を大っぴらに批判するし、台湾人の友人は、中国人の友人と歴史をめぐって激論を交わしていた。

日本ではなぜ、意見が対立することを極度に避けるのだろうか? 昔から“あうんの呼吸”と根回し、協調性が求められる。議論で反対意見を言おうものならすぐに感情的になり、相手の全人格を否定して一生口を利かなくなる人も少なくない。

昔から同一性の高い人々が集住して「和を以て貴しとなす」が浸透したからかもしれないし、個を押し殺して全体の流れになびくことが多かったからかもしれない。

しかし、グローバルコミニュケーションの場で、そういう日本流のやり方は一切通用しないのだ。

さまざまなバックグラウンドの人たちが世界中から集まり、議論を戦わす場では、以下の3点に気をつけなければならない。すなわち、①間違っていてもいいから意見を言うこと、②意見の否定と人格否定を混同しないこと、③遠慮していたら発言の機会などないと知ること、だ。

今回は、日本のドメドメの銀行でガッチリと日本式コミュニケーションに染まったのち、インシアード留学を通じて「グローバル・コミュニケーションの神髄」に目覚めた、小中島洋平氏にご登場いただこう。

 

何がいけなかったのか

私(小中島洋平)が失敗に失敗を重ねてついに悟った(ような気がしている)、文化的背景が異なる相手とのコミュニケーションの極意を、今回はすべてお伝えしたいと思います。

結論から言いましょう。グローバル・コミニュケーション能力は、「完璧な言語」ではなく「コミュニケーション・スタイル」で決まるのです。

私が邦銀の海外拠点で働いていたときのこと。現地の行員たちに組織の達成目標を伝えても、自分で意図しているほど明確に伝わらず、もどかしく感じる場面が何度もありました。

もちろん言葉の問題もあったのですが、それにしても、どんなコミュニケーションスタイルなら文化の異なる相手に意図を伝えられるのか、十分に考えていなかった、あるいは工夫が足りなかったと、いまは思っています。

また、ビジネススクールでファイナンスに関する議論をしていたときのこと。ブラジル出身の友人に「No, you are wrong!(あなたは間違ってる!)とものすごい勢いで言われ、動揺して黙ってしまったことがあります。

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日本で生まれ、人生の時間の9割以上を日本語に囲まれて過ごしてきた私にとって、英語で一抹の迷いもなくズバリ!ですから、それはそれは強烈なインパクトでした。怯むことなく自分の主張を述べることはできなかったのか……いまでもあのときのことを夢に見ます。

いずれのケースも、ダイレクトなコミュニケーションに慣れた海外の人たちが相手なので、私が「もうちょいはっきり言わんかい!」っていう話ですよね。でも、私だけではなく、多くの日本人にとって、「はっきりダイレクトに意見を主張する」のは、そんなに簡単なことではないと思うのです。

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