人口・少子高齢化

夕張市破綻から10年「衝撃のその後」若者は去り、税金は上がり…

第2の破綻を避けるために
NHKスペシャル取材班

人事を統括する寺江さんはその一人ひとりの話を丁寧に聞き取ったうえで、退職願を受け取った。彼らは「まちの未来に希望を持てない」と口を揃えた。組織の維持管理のためには、一人の減員も避けたいところだったが、彼らの思いを知れば知るほど引き止めることができなかった。

夕張に残った住民は「全国最低の行政サービス」と「全国最高の市民負担」を強いられることになった。新たに入湯税やゴミ処理手数料などが導入される一方で、各種税金や公共料金も引き上げられた。

破綻前と破綻後を比べると、市民税が3000円から3500円に、軽自動車税は1・5倍、下水道使用料は10立方メートル当たり1470円から2440円に引き上げられた。ちなみに下水道料金は東京23区の約2倍である。

その一方で、集会所や公衆便所や小中学校などの公共施設は次々に閉鎖され、残された公共サービスの水準も全国最低。老朽化した市営住宅を直すお金も、危険な廃屋を取り壊すお金もない。

ゴーストタウンと化した夕張市(Photo by gettyimages)

市職員は、「夕張の再建」という理想を持っていても、自分たちには何の裁量もなく、合理化以外には何もできなかった。職員たちの間には、「自分たちの仕事は一体何のためにあるのかわからない」という無力感が漂っているのだと言う。

「自治体としての責務は、市民の生活を安定的に継続させながら生命財産を守っていくことに尽きます。しかし、夕張市の職員は、その本来の自治体が果たすべき責務がやりたくてもできないのです。手をこまねいているうちに、どんどんどんどん人口は減り、街の活気がなくなっていく。

 

『これからの自分の人生を考えた時に、はたしてこの町に住んで頑張れるのか自信が持てない』。そういう思いに至るのは当然で、踏み止まって、何とか頑張ってきた10年15年選手が、次々辞めていきました。

蓄積した業務のノウハウも人とともになくなっちゃう。組織にとっては相当な痛手ですね。でも彼らの気持ちはよくわかりますから、何も言うことができない。

破綻から10年間、複雑な思いでこういう人たちを見送ってきました。そういう辛い思いを毎年繰り返し経験してきたので……。中堅職員・若手職員の退職願を受理するっていうのはもう、僕的にはやっぱり耐えられないものがあります」

寺江さんは募る想いを包み隠さず話してくれた。

もう一度破綻しかねない

財政破綻から10年という節目の2016年、夕張市は地方創生を追い風に、「計画」に縛られた閉塞状態から一歩前に踏みだそうと動き出した。指揮を執るのは2011年4月に、当時全国最年少(30歳1ヵ月)で市長になった鈴木直道氏だ。

埼玉県三郷市出身で夕張とは縁もゆかりもなかったが、転機となったのは2008年。東京都から夕張市へ出向する派遣職員として職場で推薦され、期限付きのヒラ職員としてこの地にやってきたのだった。

1年の任期を延長し、2年2ヵ月夕張市役所で働いた後、東京に帰る年に市民から「あなたが市長選に立候補してほしい」と依頼を受けた。鈴木氏は、東京都職員という安定した職を捨て、先行きの見えない夕張市の舵取りを担うべく選挙に立つ。

石原慎太郎・東京都知事や猪瀬直樹・都副知事(いずれも当時)が選挙カーに立って応援するなどの支援もあり、見事当選。現在2期目を務めている。