人口・少子高齢化

夕張市破綻から10年「衝撃のその後」若者は去り、税金は上がり…

第2の破綻を避けるために
NHKスペシャル取材班

国は、人口減少に合わせて職員数を減らすのが当然と考え、特段の手当てが講じられることもなかった。

しかし、人口が減ったからといって事務量がそれに比例して減るはずもなく、市職員の一人当たりの仕事量は増大した。北海道を始めとする他の自治体や企業からの出向者など約20人の派遣職員を得たが、それでも追い付かず、市職員が夜遅くまで残業する事態に追い込まれた。経費節減のため午後5時になると冬でも暖房が切られてしまい、室温がマイナス5度まで低下して、コップに入った水が凍ってしまうこともあったという。

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容赦ない合理化は、就労環境を悪化させるにとどまらず、市職員の士気を下げ、先行きの見えない市政に絶望した若手職員らの離職がさらに進むという悪循環を招いた。

私たちは、夕張市の人事・採用の責任者である総務課の寺江和俊課長(54歳)を取材した。夕張市役所で働くことの意味を誰よりも熟知する人物である。

寺江さんの席は職員たちを見渡せる夕張市役所4階フロアのほぼ中心に位置している。その横に丸椅子を置き、質問を投げかける。周りに多くの職員たちが働いており、取材のやり取りはすべて筒抜けだ。

こうした状況では通常、本音を引き出す取材は不可能だ。何度か通っているうちにふたりだけの場で本音を聞ける関係を築くことができれば御の字である。ところが、初対面のこの日、寺江さんの口からは予想を裏切る「本音」があふれ出た。

「ここにはね、希望がないんですよ。組織として続かないですよ!こんなんじゃ」

 

寺江課長の言葉に込められた怒りと諦め。それは特定の誰かに向けて放たれているというわけではなく、とにかく今自分たちが直面している状況を誰にもわかってもらえていないことへのやるせない思いが噴き出しているように見えた。

そしてその言葉がまるで普段の日常会話であるかのように職場の誰も気にとめる様子もない。周囲の職員たちは静かにパソコンに向き合い続けていた。

寺江さんが課長になったのは財政破綻直後の2007年。ヒラ職員からの大出世であるはずのこの人事は全くめでたいものではなかった。上司のほとんどがいなくなる中で、45歳という年齢もあって辞めるに辞められなかった寺江さんに管理職ポストが回ってきたのである。

部長や次長などの幹部級のポスト自体が廃止されたため、これ以上出世の望めない「万年課長」。しかも、給与は一般職だった頃よりも3割減り、月の手取りは17万円となった。

しかし、本当の地獄はここから始まった。待遇が悪くなったことを受け入れ、それでもなお市役所に踏みとどまっていた若手・中堅の職員たち、破綻した町を再生させたいと厳しい環境を承知の上で夕張市に飛び込んできた新採用の若者たちが「耐えられない」と言って次々と辞めていったのである。