学校・教育

子どもに「命令」できない親が急増中! それはただの責任放棄だ

世代間連鎖を防ぐ子育て論(4)
信田 さよ子 プロフィール

騒ぐ子どもを黙らせる方法

乳児は別でしょうが、子どもは概して、つまらなくなると騒ぎ始めるものです。窓の外の景色に夢中になっているときはおとなしくしています。

騒いだりするのは、面白く楽しいことがほかに何もないときです。狭い車内に閉じ込められ、同じ場所にずっと座らされていれば、つまらなくなっても当然でしょう。

ご存じの方も多いでしょうが、たとえばヨーロッパでは乗り物の中で子どもが騒ぐことはほとんどありません。

多くの親たちは、乗り物の中で過ごす2~3時間のあいだ、子どもが楽しめるものをあらかじめ用意して持っていきます。

 

ロンドンからパリ行きのユーロスター車内で隣に座っていた2人(2歳と5歳くらい)の子連れの母親は、最初は2冊の絵本を読み聞かせ、次にパズルを出し、最後はクッキーを出して食べさせ、終点まで2人は騒ぐこともありませんでした。

日本とは公共意識が異なると言ってしまえばそれまでですが、できれば出かけるときに、小さめの絵本を1冊持っていきましょう。

ふだんあまり読んだことのない、新しい絵本がいいでしょう。そして騒ぎ始めたら、ページを開いて小声で読んであげましょう。

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小型で動かないおもちゃを与えるのも効果的です。指人形や布でつくったおもちゃなどは、子どもが座りながら手にするのに最適です。

おもちゃや絵本を忘れたら、お菓子でもかまいません。あまりおなかに溜まらないもので、ビスケットなど粉の落ちる干菓子は避けたほうがいいでしょう。

ふだん与えていない特別なお菓子のほうが効果的ですね。15分くらいなら、それで十分静かにしていてくれるでしょう。

これまで出会った母親たちで、そのようなものを準備している人はほとんどいませんでした。中にはスマホを子どもに持たせて、それで静かにさせる親がいました。

結果的には絵本などと同じ効果を生むのですが、絵本やおもちゃ、お菓子などはそれほど重かったりかさばったりしないのですから、子どもを連れて外出するときは、必ずバッグに入れるようにしましょう。

電車に乗るときぐらい考えごとをしたい、疲れているからほっとしたいと感じても、そこは頑張るべきだと思います。

子どもを放置してスマホを眺める、うるさいと怒るというのは、自宅でならまだしも、公共の交通機関においてはやめるべきでしょう。

子どもは、つまらなかったり、退屈したり、興奮すると騒ぐものだということを繰り返しておきます。

子どもに命令することに怯える親

さて、タイプ4とタイプ5の例は、かなり重要な問題をはらんでいます。

・タイプ4(「静かにして」と頼む親)

この10年間、親たちの耳障りな言葉が増えました。「~してね」「して」と子どもに頼んでいるのです。

先日もレンタルショップでDVDを借りようと並んでいたら、3歳くらいの男の子が、近くの棚に足を掛けて登ろうとしていました。私のうしろに立っていた父親らしき男性が声を掛けました。

「やめて」「こっちに来てね」

つい1週間前にも、地下鉄の中で父親のスマホをポケットから出そうとしている息子(4~5歳)に向かって、「や・め・て・、くだ~い」と制止する場面に出会いました。それを聞いた私は、「ああ、またか」とがっくりきてしまったのです。

こうやって、まるで頼んでいるような、「子どもにお願いをする親たち」の急増ぶりはどういうわけなのでしょうか。

その父親は、なぜ「やめなさい」「こっちに来なさい」と言わないのでしょうか。あたりまえになっているので、自分たちがお願い口調であることに、父親も母親も気づいていないのかもしれません。

保育園などでも、子どもたちを並ばせるときに「ならんでくだ~い」と保育士さんが大声で叫んでいるので、驚いてしまいました。

これらの「お願い」口調は、ほとんどといっていいほど「語尾上げ」とセットになっています。さきほどの例で太字にしたのが、上げている語尾の部分です。

さすがに正しい日本語を話す女子アナたちは、テレビのバラエティ番組でもそのような語尾上げをしませんが、接客業をはじめとするさまざまな場面や、学校などでは語尾を上げることは当たり前に見られます。

あのように語尾上げする発音は、なんのために行われているのでしょう。

たぶん、一種の感情遮断をするためではないでしょうか。つまり一種のルーチン化をはかり、定型文のように発音することで、イライラや怒りを排除したり遮断したりしているのです。

結果として語尾上げは、込める感情を希薄化させるだけでなく、機械的で形式だけのていねいさと、さらに責任主体のあいまいさを生むように思われます。

多くの親たちは、怒鳴ったり怒ったりする代わりに、「○○してくだい」と語尾上げで「お願い」しているのでしょう。