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「燃え殻さん」って何者だ…?デビュー作が品切れ続々で話題

~フォロワー9万人から小説の世界へ
宮田 文久 プロフィール

――クレープが何を意味しているのか分からない(笑)。

燃え殻 ひとまず「わかりました」と言って浅草に向かったら、「クレープ屋の前のベンチに座っています」とメッセージが来て。確かに、外のベンチに小沢さんが一人で座っているんです。本当にヤバいと思いました…。しかも「人見知りだから、あまり喋れない」とか言い出して。どうしようもないから2人でベンチに並んで座りました。まるで映画『家族ゲーム』ですよ(笑)。

で、そこから小沢さんの家に伺って、酒を飲んで。いろいろと話しているうちに気が合うことに気付いたんです。根っこが一緒というか…。そこで小沢さんが突然、「小説家、誰が好き?」と尋ねてきて。ちょうど『民宿雪国』や『さらば雑司ヶ谷』で注目を集めていた樋口毅宏さんの小説を読んでいたので、「僕は最近、樋口毅宏さんという小説家が好きなんですよ」と言ったら、小沢さんの本棚にも、樋口さんの『さらば雑司ヶ谷』があったんですよね。

――すごい偶然ですね……。

燃え殻 小沢さんも樋口さんの作品が大好きで、会ったこともある、と。その日はそれで小沢さんと別れたんですが、その後、小沢さんが僕の誕生日祝いをやってくれるということで、呼ばれた店に出向いたんですよ。そこで、小沢さんが「会わせたい人がいるから」と、扉を開けて紹介したシークレット・ゲストが、樋口さんでした。

ちょっと小説書かないか

――「会わせたい人がいる」…普通は女性かと思いますけど、まったく違った(笑)。

燃え殻 そうなんです、嬉しいんですけど、「あ、ありがとうございます」くらいのテンションで……(苦笑)。僕と樋口さんが初対面でポツポツと喋っていると、小沢さんが合いの手を入れるように「夢みたいだね」「ドキドキしてる?」って言ってきて(笑)。

 

――小沢さんとしては善意ですもんね(笑)。でもそこで、樋口さんと意気投合したわけですか。

燃え殻 そうなんですよ、樋口さんはその場でずっとプロレスの話をしていて、僕もプロレスも好きだし、音楽的な趣味も合ったので、今度は僕と樋口さんがちょくちょく会うようになったんですね。それで、樋口さんに呼ばれて二度三度と酒を飲んだある夜、「お前さ、ちょっと小説書かないか」と言われたんです。

――「芝浜」のように長い長い前振りでしたが、ようやくここで小説の話が出てくる(笑)。

燃え殻 でも、唐突ですよね。なんでそんなことを樋口さんが言ったのか、今でも分からないんですが…。「いや、僕は長い文章を書いたことがないので、絶対に無理だと思います」と断っても、「いや、書いたほうがいい」と樋口さんは言い張る。「いや、書けないと思います」。「書いたほうがいい」……超酔っ払った樋口さんが迫ってくるわけです。もう、すごく怖いじゃないですか(笑)。

――それは怖いですね(笑)。

燃え殻 そうしたら樋口さんが「俺、今からちょっと人を呼ぶから」と言ってやってきたのが、cakesの編集者の中島さんでした。中島さんは僕のことを何も知らないのに、「こいつは小説を書けるから、明日からメールしろ」と樋口さんが言うんです。中島さんも「はい」と言っていて……(笑)。

――知らない人に小説を書かせるためにメールしなければいけない。編集者としてはつらいですよね(笑)。

燃え殻 絶対に面倒くさいと思ったはずなんでよね。「誰なんだよお前は。なんで俺がメールしなきゃいけないんだ」って普通は思うじゃないですか。しかもTwitterの呟きを集めた本なら分かるけど、書いたこともない小説で、しかも連載って……。

中島さんも樋口さんに怒られないように、という気持ちが強かったと思うんですが、その後すぐに連絡が来て、「とりあえずメールのやりとりを始めませんか」と。半年くらいはメールだけで、その期間に会ったのは最初の1回だけですよ。

――Z会の添削とか赤ペン先生みたいな感じですね(笑)。

燃え殻 「燃え殻さんは、今までの人生で何かありましたか」みたいな、すごく大掴みな質問がくるんです。「どんな恋愛をしましたか」「すごいカワイイ女性と付き合って、バンバンやりまくったことはありますか」といったような、雑な質問が(笑)。そのときに、「いや、俺、すげえブサイクな女にフラれたことがあるんですよ」と返信したら、「え、ブサイクなのになんでフラれるんですか…!?」という感じで返事が来たんですよ!

――ようやく、本当に食いつく瞬間が訪れた(笑)。