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インターネット上で見ると死ぬと噂される「検索禁止ワード」一覧

怖がりな人は読まないで下さい
長江 俊和 プロフィール

④「エド・ゲイン」

さらに、この本を執筆していて驚いたのは、「エド・ゲイン」のことである。エド・ゲインとは1950年代のアメリカに実在した殺人鬼であり、『サイコ』『悪魔のいけにえ』『羊たちの沈黙』などの名だたる恐怖映画の名作は、エド・ゲイン事件をモデルとして製作された。

だが私は、ヒッチコックの『サイコ』がエド・ゲイン事件をモデルにしたということに少し疑問があった。モデルというほど、『サイコ』とエド・ゲインの話はあまり似ていないと思っていたからである。だが今回調べてみると、その疑問が一気に氷解した。

アルフレッド・ヒッチコック監督『サイコ』

1957年、ウィスコンシン州の田舎町で、金物店の女主人が、血痕だけを遺して失踪するという事件が起こった。目撃証言からエド・ゲインという49歳の独身男が、容疑者に浮上する。

警官が彼の農場に急行すると、首を切り落とされ、逆さ吊りにされた女主人の全裸死体を発見した。あまりの残酷な遺体の姿を見て、警官は思わず吐きそうになったという。だが、それはまだ序の口にすぎなかった。さらに奥に進んで行くと、彼はまるで地獄絵図のような光景を目の当たりにする。

エド・ゲインの部屋は、無数の女性の遺体であふれていたのである。しかも遺体には、酸鼻極まる処置が施されていた。食器棚に並べられた女性の生首。頭蓋骨を半分に割ったスープ皿。女性の顔の皮を被せたランプシェード。壁には、乳房のついた生身のチョッキやベストや、皮膚を剝いで作ったマスクが、ずらりと飾られていたという。

一体なぜ彼は、悪魔のような所業を行ったのだろうか。厳格な母に育てられたエド・ゲインは、母が死んでからも呪縛から逃れることが出来ずにいた。やがて彼は、墓場から女性の遺体を盗み出すようになり、家に持ち帰るようになる。

警察の取調べでエド・ゲインは死体の皮を被って、夜の墓場を行脚することもあったと告白している。そして、死体を掘り返すだけでは飽き足らず、殺人まで犯すようになったというのだ。

 

この事件を新聞記事で知ったのが、当時ウィスコンシン州に住んでいた、作家のロバート・ブロックである。彼はこの事件に着想を得て、『サイコ』という小説を書き始めた。だが実は、あまりにも凄惨な出来事だったため、事件が起こった時はあまり詳しく報道されなかったらしい。

そのためブロックは、エド・ゲイン事件の詳細をあまり知らぬまま、『サイコ』を執筆したという。だから『サイコ』の舞台は、農場ではなく郊外のモーテルであるし、ストーリーや犯行の様相も、エド・ゲイン事件とは大きく違っているのだ。

その後、ブロックの小説をもとに、アルフレッド・ヒッチコック監督が『サイコ』(1960年)を映画化したのだが、『サイコ』とエド・ゲイン事件とあまり似ていないのは、このような理由があったからである。

それとは逆に、1975年に公開された『悪魔のいけにえ』は、エド・ゲインの所業を忠実に映像化したような映画である。舞台は田舎町の農場。吊し上げられる女性。死体の皮を被った男……。

だが監督のトビ・フーパーは、エド・ゲイン事件を知らなかったというのだ。監督によると、この映画の発想の原点は、子供の頃に叔父から何度も聞かされた、恐ろしい都市伝説の記憶だという。それはウィスコンシン州に伝わる「女の皮を剥ぎ取りランプシェードを作る殺人鬼」の伝説……。忌まわしい事件の記憶は都市伝説に姿を変え、アメリカ中に蔓延していたのだ。

悪魔のいけにえ』は、殺人鬼エド・ゲインの怨念が監督の深層意識に忍び込み、作らせた映画というわけなのである。

検索禁止』には、ほかにも古今東西の封印された出来事や、身も凍るような事件について記されている。「コトリバコ」「黒い日曜日」「ソニー・ビーン事件」「稲垣吾郎の『隠し妻』を名乗る女」「バニシェフスキー事件」「ストーカー人違いバラバラ殺人」……。

真夏の夜に、リアルな恐怖を体感したいという方は、是非手にとっていただきたい。でも恐いものが苦手という人は、読まない方がいい。眠れなくなったり、気分が悪くなったりした方がいたら、申し訳ない。念のため。

必ず死ぬ――そう言われても、ヒトは検索せずにはいられない……。
長江俊和(ながえ・としかず)映像作家、小説家。1966年大阪府生まれ。深夜番組「放送禁止」シリーズを制作し、熱狂的なファンを生む。2012年、短編小説『原罪SHOW』が、日本推理作家協会の推理小説年鑑『ザ・ベストミステリーズ2012』に選出。2014年、小説『出版禁止』(新潮文庫)を上梓し話題に。映画の代表作は『放送禁止 劇場版 密着68日 復讐執行人』『放送禁止 劇場版 ニッポンの大家族』『パラノーマル・アクティビティ第2章TOKYO/NIGHT』『放送禁止 劇場版 洗脳~邪悪なる鉄のイメージ~』『不安の種』『ホラーの天使』。著作に『ゴーストシステム』『放送禁止』(角川ホラー文庫)『掲載禁止』(新潮社)『東京二十三区女』(幻冬舎)など。『検索禁止』(新潮新書)は初のノンフィクション。