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漂流する「トランプ外交」そして北朝鮮は野放しに…

中ロ韓は面従腹背で様子見か

対北朝鮮戦略の温度差

7月4日の北朝鮮のICBM発射成功は、ハンブルグでのG20サミットの主要な議題となった。ただし、G20がこの問題で共同文書を出すことはできなかった。そもそも、地理的に遠いインド、欧州、中南米、中東の諸国は問題を共有していない。

あくまでも、北朝鮮の核・ミサイル開発に影響を受けるのは、北朝鮮を交えた6者協議の交渉国、つまり米国、韓国、日本、中国、ロシアである。しかし、この5ヵ国においてすら、それぞれの認識および政策は大きく異なっている。

 

今回、温度差が明白なのは、北朝鮮への圧力を強くかけることで合意している日米と、日米との連携は重視しながらも対話を求める韓国、そして北朝鮮の核・ミサイル開発は非難する一方で、米韓軍事演習の凍結やTHAAD(高高度ミサイル迎撃)システムの配備の中止を求めている中ロだ。

さらに足元を見ると日米の圧力形成も心もとない。日本の安倍首相はG20の席上で、「圧力を強化して厳しい政策を盛り込んだ国連安保理決議の早期採択」を求める発言を行い一貫している。しかしトランプ政権からの発信にはブレがある。

例えば、ニッキ・ヘイリー国連大使が、北朝鮮に対して国連安保理の席で、すべてのオプションを選択にいれるという厳しい発言をしている一方で、軍事のトップであるマティス国防長官は、早々に軍事オプションではなく外交による解決を求める発言をしている。

やっと問題の難しさに気付いた段階

こうなると、トランプ政権に明確な対北朝鮮戦略があるかどうかが疑わしくなる。おそらく、トランプ大統領の特異な政策観と政権内部の対立があり、政権全体で明確な対北朝鮮戦略は共有されていないと結論づけられる。その根拠は以下の3つである。

第一に、トランプ政権は、反エスタブリッシュメント、脱ワシントンを志向し、既存の共和党の安全保障専門家からのアドバイスを拒否し、具体的な政策議論を経ずに2016年11月の大統領選挙で選ばれたことだ。そのため選挙期間中に北朝鮮政策をはじめとする外交・安全保障政策を、チーム全体で大統領と議論して形成した形跡はない。

第二に、現時点でも、政権内部で外交安保政策についての基本的な合意がなく、むしろ異なる認識を持つ2つのグループがせめぎあっていることだ。

米国の世界への関与と国際ルール順守のための現状維持を求めているマティス国防長官らの現実主義者に対して、アメリカファーストの掛け声の下、既存の国際ルールからの離脱を考えているバノン首席戦略官らの孤立主義者がおり、トランプ大統領はどちらの勢力も排除していない。

それゆえに、全体として矛盾した政策が生まれる。また北朝鮮政策のような長期戦略を要求される課題に、政権全体で取り組むことはますます困難である。

第三に、このような政府内での対立もあり、政権への政治任用人事が大幅に遅れていることだ。本来であれば、対北朝鮮政策に重要な役割を演じるはずの、局長級のアジア太平洋地域担当の国務次官補と国防次官捕が、任命どころか指名すらされていない。政権全体を見渡しても、過去20年間の米朝の交渉の歴史を熟知する人間が、上層部にいないという決定的な空白がある。

過去20年間の米朝の駆け引きを見てきた筆者の目には、これまでのトランプ政権の北朝鮮への姿勢は、20年間を3ヵ月に凝縮する早回しで、圧力と対話のメッセージを繰り返し、やっと北朝鮮問題の複雑な難しさに気づいて振り出しに戻った、という段階にあるように思われる。

実をいうと、過去の米国の新政権は多かれ少なかれ、そのようなことを繰り返してきている。4年ごとの大統領選挙により、政治任用の政府高官が入れ替わる米国の構造的欠陥ともいえる。

ただ、それにしても、これまでの米政権に比べ、トランプ政権の方向性の定まらなさは群を抜いている。