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国民の恐怖はカネになる…ハリウッドが警告し続ける軍産複合体の冷血

アバター、アイアンマンからローガンまで
遠藤 徹 プロフィール

『ローガン』もまた然り

いずれにせよ、これらの映画で描かれていることは、最大の問題は国の外にあるのではなく、政府あるいは、軍産複合体こそが諸悪の根源だということだ。(この辺りの内容については、今秋刊行予定の拙著『バットマンの死:ポスト9・11のスーパーヒーロー』(新評論)に詳述するつもりである)。

さらに、今年公開されたばかりの、Xメンシリーズの第10作目『ローガン』(2017)にも同様の背景を読むことができる。

2029年に時代設定されたこの映画で印象的なのは、かつて自らの体に埋め込まれたアダマンチウムのせいで弱り切ったウルバリンことローガンの姿である。

さらには、かつてXメンをひとつに束ねていたプロフェッサーも、老いを重ね、能力の制御もできなくなり、扱いにくく気むずかしい老人と化している。

そんな弱り切ったローガンに託されるのが、メキシコ国境にある町、エル・パソにあるトランシジェンという軍事産業で人工的に作られたミュータントの少女、マリアである。実のところ、マリアはローガン自身の遺伝子を、名も知れぬメキシコ女性の卵子に組み込んで作られたのであり、いわば彼の娘だということになる。

トランシジェンは、ウイルスをばらまいてXメンら既存のミュータントを滅ぼし、新たなミュータントが生まれない状況を作り出したことが明らかになる。こうして、自然に生まれる(=制御不可能な)ミュータントを殲滅した上で、トランシジェンは人為的なミュータントの製造に取り組んでいたわけである。

けれども、マリアたち「x23」と呼ばれる世代は、「人格」を持つが故に操ることが難しい。それに対し、もはや人格すら持たない純粋兵器としての「x24」の開発に成功したため、トランシジェンは、マリアたち「x23」世代の子供らを、失敗作として殲滅しようとしている。

彼女を、安全な地、すなわちカナダへ逃がすための逃避行が、この映画の主たる物語となる。この映画における最大の問題点は、究極の兵器が超能力を帯びた人間兵器だということではないだろうか。

人格を持つミュータントはすべて殲滅し、都合良く管理できる人格のないミュータントを兵器として活用する。それがトランシジェンの狙いなのだから。そして、企業である以上、当然のことながらトランシジェンの目的は、こうして作り出したミュータントを軍に売り込むことになる。

人間をもはや人間として扱わない、あるいは人間ではないなにか別の製品=「モノ」のように扱うところまで、経済効率、軍事的効率を重視した軍産複合体は向かいかねない。そんな警告がここで読み取れる。

このように、軍産複合体の問題は、ハリウッドの映画によって明確に描き出されている。

解決策が示されるには至っておらず、その危険性への警告がなされているというにとどまっているという批判はありうるだろう。けれども、この国家ぐるみの「戦争ビジネス」とでもいえる問題を、早急に解決する方法は、まだ見えてきていない。

少なくとも、『アイアンマン3』のように戦いから降りてしまうのでは、この問題は解決しない、ということは確かである。

 
参考文献
Andrew J.Bacevich, “ The Tyranny of Defence Inc.”, The Atlantic, 2011,January/February issue

Anthony Peter Spannakos, “Exceptional Recognition: The U.S. Global Dillemma in The Incredible Hulk, Iron Man and Avatar” in Richard J.Gray and Betty Kaklamanidou eds,The 21st Century Superhero:Essays on Gender, Genre and Globalization in Film(Mcfarland & Co Inc Pub,2011)

John Avlon,  “The Military –Industrial Complex is Real, And It’s Bigger Than Ever” Dailybeast, 2013.6.12

Kayleigh Donaldson, “Logan is the Most Political X-Men Movie Yet”, Screenrant, 03.09.2017
http://screenrant.com/logan-movie-mexico-border-political

Naomi Wolf, “Katy Perry and the military-pop-cultural complex” the Guardian, 2012,4,16

Owen Gleiberman, “The Lesson of “Logan”: Superhero Sagas Are Better When They’re Real” Movies in Variety, 03.05.2017