アメリカ ジェンダー

「オールジェンダートイレ」とは本当に異質な存在なのか?

アメリカを二分する論争、日本ではどうなる
岡田 育 プロフィール

2016年に株式会社LIXILが実施した調査では、性同一性障害を含むトランスジェンダーの6割以上が「職場や学校のトイレ利用で困ること、ストレスを感じることがある」と回答した。

米国の調査でも似たような数字が出ている。男子便所にも女子便所にも入れず我慢して、膀胱炎などの排泄障害になってしまうケースも少なくないという。

誰もがみんな同じトイレを使うようになれば、他人から見た容姿外見が男女どちらっぽく見えるかとか、あるいは目に見えない心の中がどちらに近いかということは、いちいち問題にされない。

「自分を男だと思っていないのに男性用トイレを使わなければならない」「女性用トイレを使うのは嫌だが男性用に入ることも許されない」といったことに(毎日催す生理現象のたびに!)思い悩み煩わされることもなくなる。

私の通っていたニュースクール大学は、街中の建物に校舎が点在している都市型キャンパスだ。由緒ある旧校舎には昔ながらの男女別に設計されたトイレが残っているが、改装工事があるたびに徐々にオールジェンダートイレに生まれ変わっており、最新の校舎では初めから男女別なく設計されている、といった調子で、敷地内で時代の変遷を感じ取ることができる。

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新しくなったトイレは、どこも同じ作り。男性専用の小便器はなく、扉付き個室がずらりと並び、車椅子対応の広い個室も設置されている。老若男女、大用にも小用にも全員が同じ個室を使い、同じ場所で手を洗い、身だしなみを整える。

洗面台の鏡の前では、女子学生たちがヘアゴムの貸し借りをして、男性教員はハンカチをしまってから前髪を撫で付け、その横では着飾ったゲイの子がアイラインを引き直している。

トラブルが起きているのは見たことがないが、長居は無用という雰囲気もあって、1人当たりの滞在時間が短い。洗面台の前に長々とたむろして延々と愚痴っぽいおしゃべりを続ける女性たち、日本に限らず世界各国の女子便所で見かける例の光景も、1人でも男性利用者が入ってくれば、サッと中断して解散となる。

オールジェンダーの行き交うトイレは、同性同士で人には聞かせられない内緒話をする場としては、なかなか機能しづらいだろう。男子便所も同じかもしれないが、あの手のジメジメした「社交」を見ずに済むだけでもずいぶん風通しがよく、これまた「煩わしさがない」と感じる。

 

真逆の方針を執る州も

そんなふうに日常生活の中ですっかり当たり前になっていたから、他州で「トイレ法案」の話が蒸し返されたときには驚いた。2016年、トランスジェンダーに対して出生証明書に記載された性別のトイレ使用を命じる法案がノースカロライナ州で制定され、テキサス州などがそれに続いた。

連邦政府はこれを「差別的で公民権法に違反する」とし、オバマ前大統領の下「自らが認識する性別のトイレ使用を認められなければならない」というガイドラインを提示して、各州との間で訴訟合戦に発展した。