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アメリカ ジェンダー

「オールジェンダートイレ」とは本当に異質な存在なのか?

アメリカを二分する論争、日本ではどうなる

表記さまざま、NYのトイレ

私が住むダウンタウン、家の近所に新装開店したタイ料理屋では、客用トイレの扉に「BOTH」と書かれている。男性と女性「両方」が使えます、という意味だ。個室内はたっぷりした広さで、車椅子でもそのまま入れる。

もしかすると、健常者と障害者「両方」のニーズに対応しています、障害者と介助者が「両方」一緒に入れます、といったニュアンスも含まれているのかもしれない。

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これまた家の近所にあるヘアサロンは、トイレに「Whichever」(どちらでも)と掲げている。この店ではカット料金も一律の「Whichever」だ。世の中には長髪の男性もいれば短髪の女性もいて、髪を切る頻度だって人それぞれ。垣根を取り払われても支障がないどころか、逆にどうして今まで男女で値段が分かれていたのか、そちらのほうが奇妙に感じてしまう。

LGBTQの人も、そうでない人も、つまりSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity、性指向とアイデンティティ)が何であれ、同じように扱います、というポリシーである。

実際に使える「純金のトイレ」(マウリツィオ・カテランの作品「America」)公開が話題になったグッゲンハイム美術館でも、館内トイレは「UNISEX」表記だ。老若男女誰でも、急を要する人は目についたトイレに並び、まだ余裕のある人は空いているフロアまで螺旋状の館内をぐるぐる歩く。

その上で、小さな子供や老人が行列につくと、前に並ぶ人々が「After you(お先にどうぞ)」と順番を譲る。これは性別表記のあるトイレではなかなかお目にかからなかった光景で、誰もが同じ条件で並ぶからこそ、列の中で自然と配慮が生まれるのだと思う。

ジェンダー・ニュートラル・トイレと総称されるこうした「誰でも使えます」サインのうち、一番よく見かける表記は「ALL GENDER」というもの。生物学的に具有する性別「sex」に対して、「gender」は社会的、文化的な性を指す。

「All」(全部)の中には、「男」も「女」も「体は女だが性自認は男」も入るし、「4:6でどちらかといえば女寄りかな?」といった中間層に加え、「男か女かでは回答不能、どちらでもない」や「判断保留」だって含まれる。

 

みんなで同じ洗面台

社会全体に対するLGBTQ・性的少数者の割合については、「約7.6%」という数字よりも、「左利きや血液型AB型の割合とだいたい同じ」という説明がイメージしやすいだろう。彼らの中には、「男か、女か」という単純な二択を迫られることに、精神的苦痛を感じる人たちがいる。

たとえば、使いたいトイレの性別表記と、戸籍上の性別や身体的性別、あるいは自認する性別が、はっきりとは一致しない場合だ。