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エンタメ 週刊現代

きっかけは『世にも奇妙な物語』!?万城目学が書いた「神様小説」

独自のシステムが絶妙な味

『世にも奇妙な物語』がはじまり

―奇抜な柄のシャツを着た太った中年男と、スーツ姿に眼鏡の真面目そうな男。この二人、実は縁結びの神様とオブザーバー。新作小説『パーマネント神喜劇』は人間味あふれる神と人々のドラマを賑やかに描くエンターテインメントです。

以前、フジテレビ系のオムニバスドラマ『世にも奇妙な物語』から原作の依頼を受けて書いたのが、第1話の「はじめの一歩」です。明るくてしっかりオチのある話にするとだけ決めて短時間で考えたので、なぜ縁結びの神様にしたのかはもう憶えていません。

その後、別の短篇を依頼された時にまたその神様を登場させたので、いくつかの連作を書いて単行本にまとめることにしたんです。

―行動を根本から変える「言霊」を神様に打ち込まれたことで人生が一変する人々が描かれるパートと、神様の一人語りで神界のシステムが語られるパートがあります。神様にも昇任試験があるなどの設定が面白い。オブザーバーの正体も意外で、ユニークです。

イメージしていたのは、奥田英朗さんの『イン・ザ・プール』のような軽妙な小説。あのシリーズも伊良部という風変わりな医者のヘンな治療が、結果的にエエ方向に転ぶ話ですよね。この小説も神様が、押しつけがましくなく、人間たちに働きかける話にしようと思ったんです。

―3話目の「トシ&シュン」はそれぞれ夢を持つ男女カップルの話ですが、芥川龍之介の『杜子春』がベースですか。

そうです。芥川の話では仙人になりたがった杜子春が、何があっても口をきいてはいけないと言われ、地獄で拷問にあってもひと言も発しないでいたのに、母親が殺されそうになった時に「お母さん!」と叫んだため、結局仙人にはなれなかった。

高校の授業で、中国の原典では杜子春は感情を捨てて仙人になるけれど、芥川は愛情を捨てない話にしたと聞き、エエ話やなあと思っていたので、それを踏襲しました。

 

「村が沈むと妖怪も死ぬんです」

―表題作の最終話では中心人物となる女の子の同級生として、かのこちゃんという女の子が登場しますよね。これは万城目さんが以前発表された『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』の主人公の女の子と同一人物ですか。

登場させたのは、まあ、おまけのようなものです。今回は、あの本に書かれた時期の2年後くらいの設定になりますね。どちらも作中に神社のお祭りのシーンがありますが、同じ神社なんですよ。

よく読者の方に「かのこちゃんのお父さんは『鹿男あをによし』の主人公ですか」と訊かれるんです。あの主人公の高校教師も神の使いである鹿に命令されて日本の危機を救おうとした人物ですから、その娘のかのこちゃんも、神様から目をかけられてもいいのではないかな、と今回抜擢しました(笑)。2年前のかのこちゃんはお父さんにべったりですが、そこから成長している様子が分かるはずです。

―その最終話では、大きな地震が起きて、縁結びの神様がいる神社も潰れてしまう……。ハラハラの展開が待っています。

最後は映画の『アルマゲドン』のような感動大作で終わりたいなと思っていて(笑)。大きな危機に立ち向かう話にすると決めていた去年の4月、九州を一人旅したんです。

熊本城を見て、東京に帰ってきた3日後に熊本地震が起きました。阿蘇神社がぺしゃんこになっている写真を見て、ここを書こうと決めました。『アルマゲドン』と現実の出来事を被せるのは褒められたものではないですから、作中の場所は熊本とは分からないようにしています。

去年、8月にもう一度熊本に行ったんです。街中のバーに行ったら店の人が「法事があって大阪に行ったらほっとした自分がいた、でもそのことに申し訳ない感じがした」と話していて。

僕も東日本大震災の後、東京を離れて妻の実家に行った時に同じように感じたので分かるなと思ったし、しかも熊本では震度5レベルの余震が今もちょくちょくある。これはしんどいやろうなと。そうした人たちのことも書いておこうと思いました。