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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

「睡眠時無呼吸症候群」で寿命が10年縮む

自分では気づけない恐怖

睡眠中の身体の状態は、誰も自覚することができない。家族や友人に指摘され初めて、睡眠中に「息が止まっている」ことを知る人も多い。単なる不眠とは違う、そこには死に至る病が潜んでいる。

痩せていても無呼吸に

「ガーガー」と大イビキをかいていたかと思うとピタッと止まる。……しばらく無音(無呼吸)が続いた後に、爆音のようなイビキが再開される。それを夜中に何度も繰り返す――。「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)の典型的な状態だ。

「SASは、肥満の中年男性に多いと言われますが、痩せていて小顔の(顎の小さい)女性、さらには口腔全体に対して扁桃腺の大きい子供もSASになります。

慢性的な鼻詰まりや鼻中隔湾曲症(鼻の中の骨が曲がっているため空気の流れが遮られる)のように、鼻の病気を抱えている人も無呼吸状態になりやすいですね」

こう語るのはスリープクリニック調布院長の遠藤拓郎氏。

高齢者になれば誰しも体重が落ちてくるもの。そのため首まわりの脂肪も少なくなり気道(空気の通り道)が確保されやすくなるはず。しかし、年齢が上がってもSASの患者数は減少していないという。

睡眠時無呼吸症候群を治す!最新治療と正しい知識』(日東書院)を監修した、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルクリニック院長の白濱龍太郎氏が言う。

「高齢者で痩せている場合でも無呼吸になる人がいます。それは舌を支える筋肉が衰えてきて、睡眠時に舌が落ちてしまうからです。

SASの9割は気道が閉塞されイビキを伴う『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』ですが、高齢になると睡眠中に脳からの呼吸指令が出なくなるために無呼吸になる人もいます。これは『中枢性睡眠時無呼吸症候群』と呼ばれる。この場合は脳のトラブルが原因であり、気道が塞がっていないので、イビキは出ません。

また女性の場合は男性に比べ、プロゲステロンという女性ホルモンがイビキや無呼吸を起きにくくしています。しかし、更年期から閉経後には女性ホルモンが低下するため、SASの発生が増えてくるのです」

 

SASのサインと言われるのが「イビキ」――。SASは睡眠時にイビキと無呼吸を繰り返すため、イビキが急激に大きくなったり、逆に小さくなり過ぎると、無呼吸の前兆とも言える。

岩田恭子さん(59歳・仮名)は、夫(60歳)のイビキの変化をこう語る。

「大イビキをかいていたと思ったら、急に音が聞こえなくなって静かになる。あれっと思って隣を見ると呼吸が止まっているんです。『ちょっとあなた大丈夫』と身体を揺すると『ぷふぁー』と息を吹き返す。こんな状態がもう何年も続いていました。

そのうち本当に死んでしまうのではと心配していたのですが、でも本人は寝ているので全然自覚がなくて……」

そしてある時、妻の嫌な予感が的中する。

「いつものように息が止まったので、また揺すったんです。でもその時は一向に息を吹き返さない。慌てて救急車を呼んで事なきを得ましたが、これ以上酸素が不足していたら脳梗塞や心筋梗塞を発症したかもしれません」

岩田さんのように睡眠中の無呼吸で意識不明になり、家族が慌てて救急車を呼ぶ例は少なくない。

たかがイビキ、されどイビキ――。睡眠時無呼吸症候群を放置した場合、10年後の死亡率は16%になるとの報告もある。

「SASで呼吸が止まれば、脳や身体は酸欠状態(低酸素血症)に陥り、全身に十分な酸素が行き渡らなくなる。本人には自覚がなくても、夜寝ている間に心臓や脳など身体全体に大きな負担がかかり、最悪の場合は死を招くこともある。

SASは単なる不眠と違い、それくらい恐ろしい『病気』であることを認識する必要があります」(前出の白濱氏)

現在、国内には睡眠時無呼吸症候群で治療が必要な重症度の人は300万人と推測され、潜在的な患者は2000万人以上とも言われる。

「正確な統計はありませんが、成人男性のうち10人に3人はイビキをかいていると思います。イビキは寝ているときに気道が狭くなり、空気が口蓋垂(のどちんこ)を激しく振動させることで起きます。やがて気道が完全にふさがると無呼吸になる。

ですからイビキをかくということは無呼吸になりかけていると受け止めたほうがいい。つまり、検査していないだけで成人男性の30%は睡眠時無呼吸症候群を患っている可能性があるのです」(前出の遠藤氏)