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「あのとき信じなければ」小林麻央さんも後悔 がんを見落とす医者

体験者たちが語る無念の実例
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こうして、がんが見落とされるのは、決して「運が悪かった」からではない。青森県が10の町村でのがん検診について行った調査が象徴的だ。

検診で「異常なし」とされたのに、その後1年以内にがんと診断された人を「見落としの可能性がある」としたところ、見落としの可能性のある患者は、約4割に上ったという。見落としは、決して特殊な事態ではない。

たとえば肺がんについても、専門外の医師が診察する場合もあり、見落としリスクが高い。

「肺がんは、肺の上部、鎖骨の間、心臓の裏などにできると見つけにくい。しかし、こうした場所にできた場合でも、専門の医師であれば、過去のレントゲン画像といまの画像をコンピューターで見比べ、発見することができます。

しかし、市町村で行っているがん検診では、コンピューターがなく、呼吸器内科の専門家もいないことが多い。『検診を受けているから大丈夫』と思っていても、肺がんを見落とされている可能性はあります」(神奈川の呼吸器内科医師)

レントゲン検査そのものの効果に疑問を付す声もある。医療ジャーナリストの田辺功氏が言う。

「もともと結核を見つけるために使われていたレントゲン検査は、結核患者が減った際、放射線技師の雇用を守るために肺がん検査に転用されたもの。そもそも肺がんの発見には、使いづらい」

見落としで訴訟に発展したケースもある。医療過誤訴訟に詳しい谷直樹法律事務所の谷直樹弁護士が振り返る。

「高齢の女性が公立総合病院で有料健康診断を受け、肺に直径約1㎝の大きな異常陰影が出ていましたが、これを医師が見落としていた。翌年、女性が市の無料健康診断をほかの病院で受診したところ、肺がんが指摘され、右肺下葉を切除したのです。

進行分類は5年生存率が6割程度のステージ2B。その後、彼女は回復したものの、訴訟を起こした。がんのステージが進行し、生存率が下がったという判決で慰謝料を勝ち取りました」

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バリウム検査は危ない

谷弁護士が担当した中には、数年にわたって胃の異常を訴えたが、検査すらされず、結局別の病院で胃がんと判明し、訴訟に至ったケースもある。

胃がんはなかなか検査をしてもらえないし、かりに検査を受けたとしても見落とされることがある。胃がん検診では、バリウム検査が行われることがあるが、ここにも見落としのリスクがある。

「バリウムを使った『二重造影法』は、検査そのものが患者さんに負担をかけるうえ、X線は臓器を透過するだけですから、がんを発見しづらい。内視鏡検査のほうが効果的です。

しかし、内視鏡は技術を持った医師が必要でコストがかかるから、いまだに二重造影法が使われています。これも見落としにつながりうる」(前出・田辺氏)

 

かりにこうした検診で胃の異常が判明した後も、必ず胃がんが指摘されるとは限らない。胃カメラでの検査の際に、粘膜の表面にできた潰瘍だけを調べて安心し、粘膜の下に広がるがんを見落とすことがあるという。

だからこそ、ひとりの医師を信用しすぎず、セカンドオピニオン、サードオピニオンを検討すべきだ。神戸海星病院理事長の河野範男氏が言う。

「患者さんが不安なら、納得するまで、別の医師にかかったほうがいい。『紹介状を書いてほしい』と言いにくい場合は、紹介状なしに別の病院に行って、いちから検査を受けたって問題ないんです。セカンドオピニオンでがんと診断される例も少なくありませんから」

医師はがんを見落とすものだ――そう想定し、自衛したほうがいい。

「週刊現代」2017年7月15日号より