photo by iStock
格闘技

統計学を駆使して占う、稀勢と高安「名古屋場所のゆくえ」

データは照ノ富士有利を示すが…

大相撲の名古屋場所がきょう初日を迎える。先場所途中休場の横綱・稀勢の里、大関に昇進した高安という兄弟弟子を台風の目に、満員御礼の盛り上がりが予想される。

はたして期待通りの場所になるのだろうか。メジャーリーグ(MLB)で重視されるデータ分析手法「セイバーメトリクス」の専門家・鳥越規央氏に、統計学を活用して今場所のゆくえを占ってもらった。

名古屋場所前の恒例行事、熱田神宮奉納土俵入りが7月1日に行われた。ここに4横綱が揃うのは18年ぶりのことだ。千秋楽まで全員が元気な姿を見せることができれば、実に27年ぶり(平成2年九州場所の千代の富士、北勝海、大乃国、旭富士以来)の4横綱皆勤となる。

今年の名古屋場所は、新大関・高安、新関脇・御嶽海が昇進後の初土俵。貴乃花部屋の出世頭、20歳の貴景勝が西前頭筆頭、業師(わざし)として人気上昇中の宇良と石浦がそれぞれ東前頭4枚目と西前頭8枚目、新進気鋭の北勝富士、輝、阿武咲が自己最高位と、初日から目が離せない番付となっている。

優勝争いだけでなく、魁皇の持つ通算最多勝利数1047まであと11と迫った、白鵬の新記録達成なるかにも注目が集まる。

下位からの取りこぼしは論外

史上9番目のスロー出世で大関に昇進した高安。昇進前3場所の勝ち星の合計は34勝で、大関昇進の目安とされる33勝以上を挙げ、大関に推挙された。

大関になる目安が33勝ということは、1場所平均11勝が必要になる。上位の横綱や大関と対等に渡りあえる力をつけることも大事だが、それよりも「下位に取りこぼしをしない」ことのほうが、星勘定を揃えるうえでは重要となる。

 

では、大関昇進のためには、関脇以下に対して具体的にどのくらいの勝率を残さなければならないのか。データから探ってみよう。

現在の上位陣について、大関昇進前3場所の関脇以下との勝率を見てみる。

白鵬 日馬富士 鶴竜 稀勢の里
.844 .767 .821 .844
琴奨菊 豪栄道 照ノ富士 高安
.794 .767 .788 .813

実に、全員が.750超えという安定ぶりである。過去の力士の数字も見てみよう。

北の湖 千代の富士 貴乃花 朝青龍
.778 .867 .821 .811 .787

いずれも7割5分を超えている。ある程度想像されたことだが、大関昇進のためには、直近3場所で関脇以下の下位力士におおよそ.750以上の確率で勝てる実力をつける必要があることがわかった。

さて、新大関・高安は、平成27年秋場所の逸ノ城戦で左足を負傷し、途中休場という憂き目に遭っている。翌場所には復帰したものの、28年いっぱいは対関脇以下の勝率が.640前後と低迷した。ところが、29年に入ると勝率が目に見えて上昇し、大関にかなう力がついてきた

高安の直近3場所における対関脇以下勝率の推移を見てみよう。

場所 対関脇以下勝敗 直近3場所勝率
平成28年3月 5勝4敗 .641
平成28年5月 9勝6敗 .641
平成28年7月 7勝2敗 .636
平成28年9月 6勝4敗 .647
平成28年11月 5勝4敗 .643
平成29年1月 7勝3敗 .621
平成29年3月 10勝1敗 .733
平成29年5月 9勝2敗 .813

平成29年に入ってからは、過去の名横綱にも匹敵する数字が並ぶ。

では、現在最も大関に近い地位にいる、東関脇・玉鷲と西関脇・御嶽海の現状はどうか。直近3場所の対関脇以下戦の勝率を見てみると、玉鷲の.607に対し、御嶽海が.786と大きく上回っている。玉鷲は関脇の地位で3場所連続勝ち越している実力者ながら、下位への取りこぼしが目立つということだ。

ちなみに、玉鷲が名古屋場所を含めて3場所合計33勝をクリアするには、明日から15戦全勝するしかない。その確率は、対大関横綱戦の勝率を五分五分と仮定して考えたとしても、わずか0.0144%だ。また、新関脇の御岳海が、秋場所での大関昇進を狙う足固めとして12勝以上できる確率は、8.23%となっている。