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「定年後無職」急増で、この国の消費は驚くほど停滞する

なんと現状でも4割が「無職世帯」
熊野 英生 プロフィール

2013~16年に不安は植え付けられた

マクロ経済スライドが有効でなかった背景については、少し丁寧に説明していく必要がある。

まず、年金生活者は、年金を実額として減らされることに強い抵抗を感じる。こうした心理もあって、特例として1999~2001年の物価下落分を年金支給額にスライドさせずにきた。この特例による差額を解消するために2013~15年にかけて年金支給額が2.5%のカットされた(図2)。

図2

実にタイミングが悪いことに、この修正の最中の2014年に消費税率が上がって、15年度からマクロ経済スライドが実施された。実額での年金カットに続いて、実質的な年金支給の抑制が追い討ちをかけた格好である。

現状、消費者物価が1%以上に上がる要因は、消費税の増税くらいしかなく、その時には年金生活者には0.9%ポイントのマクロ経済スライドの押し下げに見舞われる。

 

もしも、消費税が増税されなければ、マクロ経済スライドも先送りされる。高齢者が消費税の増税反対に回っていく気持ちも筆者にはわからないではない。

もうひとつ加えると、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が、60歳から61歳に遅れさせたのが2013年度から、61歳から62歳へと遅らされたのが16年度となっていた。これも、年金カットと同じことになるので、シニアに移行した人たちは、生活への不安を2013~16年にかけて特に強めたことであろう。

有識者の中には、これは2004年のときにすでに決まっていたルールだから意外感はないはずだ、という発言がある。筆者はそうではなく、年金カットのタイミングが重なることが事前に分かっていたにも関わらず、意図的に避けなかったことが余計にダメージを大きくしたと考える。

そして、本来は、将来の社会保障システムの維持に必要な消費税の増税を、高齢者が嫌うようなインセンティブ設計にしてしまった。2004年の「100年安心」が成り立って、消費税の増税が反対されるのはおかしな理屈である。