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「定年後無職」急増で、この国の消費は驚くほど停滞する

なんと現状でも4割が「無職世帯」
年金問題が日本の未来に暗い影を落としている。高齢者の生活が年々厳しくなる運命は、もう2004年の年金改革のときから決まっていた。ただ、大多数の国民は、制度の複雑さゆえに、そのプランがかなり進んでくるまでに本当の厳しさを実感できずに来た。今、改めて2004年に決定された年金改革は、ひどく厳しいものだと思える。ここでは、なぜ、消費が増えないのかを考えながら、その犯人である年金改革の実態を明らかにしていく。

シニアが増えれば消費は小さくなる

最近、政府の景気判断、つまり月例経済報告は、個人消費が上向いたと認識を改めている。たしかに2017年に入って、消費の指標は改善が続いている。ただこれは、16年11月ごろからの株価持直しによる資産効果が理由かもしれない。

また16年冬は天候不順による生鮮食品の値上がりが消費の重石となったが、17年に入ってその要因が徐々に解消されたことが、消費を一時的に増加させたようにみえるのかもしれない。

 

ただ筆者は、あまり目先の指標ばかりを追うよりも、消費が伸びにくい構造の方を正しく理解した方がよいと考える。その構造とは、一口で言って世帯の高齢化である。

消費の単位を世帯(家族)だと考えて、世帯主の年齢構成をみてみる。単身を含めた総世帯では、2016年で60歳以上の世帯が53.6%を占める(図1)。世帯主の半分以上がシニアなのである。

図1

これを世帯主65歳以上でみると44.8%になる。この割合はほぼ一貫して上昇しており、今後も低下することは考えにくい。つまり、日本の消費者は全体として毎年、歳をとり続けていくのだ。

金額でシニア消費を測ると、2016年は60歳以上の世帯主がいる世帯消費の合計が117.6兆円。5年間で9.3%増。実額ではちょうどプラス10兆円の増加となる。これを65歳以上でみると、95.0兆円である。5年間で23.1%も伸びた計算になる(いずれも第一生命経済研究所試算)。

このデータをみて、「シニア消費を狙え!」と言いたくなる人もいるだろうが、そこは冷静な分析力があった方がよい。シニア消費はボリュームこそ巨大で成長力を持っていそうだが、個々のシニアの消費は小粒なのである。個人消費全体は、小粒の単位の増加によって変化しているに過ぎない。

たとえば、シニア消費がこれほど膨張しているのに、個人消費全体では5年前に比べて低調なのはなぜか。それは58歳だった人が63歳になって、サラリーマンから年金生活者になった、というような人が大勢いるからだ。現実に60歳以上の消費総額は増えて、逆に60歳未満の消費総額はもっと減っている。

データに基づくと、世帯主50歳代の1世帯消費支出は26万7072円/月である。これが60歳以上になると、22万1080円/月に減る。60歳以上になると2割弱ほど消費支出が減るということである。

特に、無職世帯(世帯主の勤労収入がない世帯)は、1世帯平均の消費支出が20万1713円/月とさらに低い金額になっている。そうした無職世帯は、総世帯のうち38.2%(2016年)にも増えている。彼らは、賃上げの恩恵にも浴することなく、なかば固定的収入の中でやりくりしなくてはいけない。

日本の消費者は、年々シニア層が増えることで1世帯の消費単位が小粒化しているのが実情である。