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安倍官邸は、都議選の大敗北を「稲田更迭」で終わらせてはいけない

「説明能力」を取り戻せるか、がカギだ

まずは稲田失言から

東京都議選で自民党が惨敗した。それが今後の政局にどう響くかは、自民党が敗北をどう総括するかにかかっている。オウンゴールの部分はサッカーと同じで、起きたことは仕方ない。むしろ政策の説明能力不足のほうが心配だ。

今回の結果は都民ファーストの会の勝利というより、自民党の敗北である。選挙戦の序盤から中盤にかけては都ファ優勢と伝えられていたが、自民もそこそこ健闘していた。両者伯仲という見方もあったくらいだ。

それが、まさに崖から転げ落ちるように惨敗したのは森友学園と加計学園問題、組織犯罪対策法の本会議採決による国会閉幕といった強硬策の影響もあるが、なんと言っても最終盤での稲田朋美防衛相の失言と豊田真由子衆院議員の暴言が決定的だった。

 

都議会自民党の古い体質に都民が嫌気をさしていたという事情もある。ボスといわれた内田茂・元都議の暗躍は散々、報じられた。都民とすれば「ここで自民党を負けさせなければ、あの人たちが復活してしまう」と思ったに違いない。

その意味では、古い自民党がほとんど一掃されてしまったのだから、惨敗は悪い話ばかりでもない。都議会自民党については実績らしい実績を思い出せず、内田都議の暗躍を許した罪のほうが重い。その点に限って言えば、私は惨敗をむしろ歓迎する。

問題は、その他の敗因をどう総括するか。まず稲田失言だ。

私は規制改革分野での稲田氏の仕事ぶりを高く評価している。だが「防衛省、自衛隊、防衛大臣としてもお願いしたい」とは、あまりにうかつな発言だった。いずれ内閣改造で事実上、更迭されるだろうが、政治家としての研鑽を積んでいただく以外にない。

ただこれは、あくまで稲田氏の問題である。当たり前だが、自民党が「自衛隊も自民党候補を応援せよ」などと考えているわけではまったくない。だから稲田氏が更迭されてしまえば、失言問題は終わりとみていい。

「国民目線」が足りなかった

豊田氏の暴言問題も同じだ。すでに自民党を離党しているので、あとは出処進退を含めて豊田氏自身の問題である。

ただそうは言っても、豊田氏も「魔の2回生」と呼ばれた当選2回目の議員だった。こう2回生議員ばかり失言やら不祥事が続くと、個人の資質の問題とばかり切り捨てられない。自民党は党として新人教育を真剣に考えるべきだ。

本会議採決による法案の強行突破と国会閉幕をどうみるか。こちらは自民党としての国会・政権運営判断に基づいており、失言、暴言問題とは次元が異なる。ここは、やはり一強多弱と言われる安倍晋三政権のおごりが出たと言わざるをえない。

テロ等準備罪を含む組織犯罪処罰法をめぐる野党の追及が素晴らしかったとは言えない。だが、金田勝年法務相を含めて政府側の答弁もほめられたものではなかった。それは与党を含めて、だれもが思っているはずだ。一言で言えば、説明能力不足である。

そういう弱点があったのは間違いないのだから、どう説明不足を補うか。あるいは、いっそ法案を引っ込めて出直しするか。国民目線で見て、なにが誠実な対応なのかを早い段階で判断すべきだった。説明不足が重大な判断の失敗を招いてしまった。