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日銀の追加緩和策として「マイナス金利の深堀り」は有効か?

「量の拡大」は限界を迎えたが…

マイナス金利政策の問題点

筆者は先日、金融学会のパネルディスカッションでパネリストをつとめた。内容は、「ビジネスエコノミストの立場から現在の金融政策を評価する」というものだった。

本番では、学会の儀礼なのか、お互いの主張を尊重し、あまり突っ込んだ議論はしなかったが、その前の打ち合わせでは、現在の日銀の金融政策について、様々な話題で、他のパネリスト、及び、金融学会のプログラム委員の先生方と有益なディスカッションをする機会を得た。

その中で、興味深かったのは、現在、多くの論者(特に債券市場関係者)の間で、日銀の出口政策についての議論が盛んになりつつあるが、現在の日銀の金融政策に批判的な論者の方々は、出口政策の前に追加緩和を余儀なくされる機会があるのではないかと考えている点であった。

すなわち、マスメディア等では、よりスムーズに出口政策を実施するために、日銀は国債の購入量を減らしていくべきだという意見が多く出されている状況だが、このディスカッションの場では、現状の日銀の金融政策に対し、批判的な立場である方々が、出口政策ではなく、「次の緩和策では何をやるのだろう」ということを問題視していた。

特に、「量の拡大」が限界を迎えたという認識の下、次の緩和策として「マイナス金利の深堀り」は可能であるのかということを、かなり真剣にディスカッションした。

結論としては、次の緩和策として「マイナス金利の深堀り」はリスクが大きすぎるということになった。その理由は、2016年1月末に導入されたマイナス金利政策が、結果的には裏目に出る形で円高をもたらしたためである。

「理論的」には、マイナス金利は円安要因に作用するはずなので、もし、次にマイナス金利政策を深堀りした際に再び円高がもたらされるか否かは、実は定かではない。だが、「政治的に」というか「お役人の発想」として、前回失敗した政策は次には「怖くてできないだろう」というのが大方の意見であった。

確かに、金融機関関係者の間では、マイナス金利政策は評判がよくない。だが、マイナス金利政策を導入した他の国で、比較的効果があった事例が存在するのも事実である。また、日本の場合、マイナス金利の適用範囲は限定的であり、原理的には、マイナス金利の適用自体が、それだけで金融機関の収益に大きなマイナス効果をもたらさないように、慎重に設計されていると筆者は考える。

ただ、残念ながら、マイナス金利導入をきっかけに円高が進行し、それにともなうデフレ圧力(予想インフレ率の低下)によって、国債の需給バランスが崩れ、需要超から長期金利が急低下(イールドカーブのフラットニング化)が金融機関の収益に大きなマイナスのインパクトをもたらしてしまったために評判が悪いようだ。

問題はそれがなぜ起こったのかという点である。