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電通事件を強制捜査した「かとく」の恐るべき調査力

~いま、企業が国税より怯える組織とは
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若者だけに気を遣う会社も

かとくが、正当な給料も支払わずに労働を強要するブラック企業を撲滅するためだけに存在するなら、誰も文句は言わないだろう。しかし、彼らが「一罰百戒」を狙うあまり、企業全体の「働き方」を縛ることに弊害はないのか。

社会保障経済研究所代表の石川和男氏が言う。

「働き方改革実現会議で残業時間の上限規制が出ていますが、従業員にとって最も関心が高いのは残業代でしょう。

私が所属していた通産省(当時)もそうでしたが、多くの職員は必要な残業を、残業代が出るから望んでやっていたんです。今もそうでしょう。

残業代がきちんと払われるなら、長時間労働であっても、ブラック企業にはあたりません。もし、長時間というだけで罰を受けるのならば、残業代をきちんと支払っている経営者も、そこで働く従業員も萎縮してしまう。

問題は、残業代を払わずに従業員に残業を強いる企業です。だから、政府の進める『働き方改革』という言葉はおかしい。本来、改革を目指すべきは、従業員の働き方ではなく、経営側の『働かせ方』なんです」

 

ある大手電機メーカーの人事部に勤務する若手社員はこう話す。

「電通事件を受けて、自分の担当する部署で80時間以上残業している社員をリストアップして、面談しろという指示を上司から受けたんです。

調査したところ、対象者が100人単位に上ることがわかった。これでは期限内に全員と面談するのは無理です。そう報告したところ、『だったら、40歳以上は無視して構わない』と言われました。

若手が過重労働で倒れたら、ましてや自殺でもすればすぐニュースになって世間が騒ぐ。40歳以上は住宅ローンもあるし、若いときから慣れているので文句を言うヤツはいない、というわけです」

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若者にだけ気を遣い、会社に従う中高年は今まで通り働かせる――。それが「健全な働き方」とは言えないだろう。

「週刊現代」2017年7月15日号より