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電通事件を強制捜査した「かとく」の恐るべき調査力

~いま、企業が国税より怯える組織とは
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「かとく」メンバーが語る

では、かとくはどのように「ターゲット」を定めているのか。かとくのメンバーである東京労働局労働基準部監督課統括特別司法監督官の戸谷和彦氏が明かす。

「かとくが調査するのは、複数の事業所で行政指導を受け、それでも労働環境が改善されない企業です。たとえば、ある企業に労働基準監督署が監督に入ったとします。

そこで違反が見つかった場合、是正勧告の文書を交付します。企業にはその後、報告書を出してもらう。

報告書に虚偽があったり、何度是正勧告を出しても改善されなかったりする場合には、かとくの出番です。

内部の従業員から『監督が入ったが改善されていない』という投書が入って、報告と実態が違うとわかることもある。かとくが入る場合は、企業側も自分たちの労働環境に問題があると気づいているのです」

かとくがこれまでに捜査した企業では、いずれも労使協定で定められた残業時間を超え、月100時間以上の時間外労働をさせていた。行政指導を繰り返したが是正されなかったため、書類送検に踏み切ったという。

「企業の中には、『うちの社員はプロ意識を持っていて、自分の判断で長時間働いているんです』と抗弁するところもあります。でも、その言い分は通りません。どれだけ長時間働いているのか、過重労働になっていないかを客観的に見ていきます。

自宅でスマホやタブレットで仕事をしたり、家に持ち帰って仕事をしたりすることもあるでしょう。これも仕事をしている実態が把握できる限りは、勤務時間と見なしていきます。データを解析していくと、社外から社内のネットワークに繋いでいる実態もわかりますから」(前出・戸谷氏)

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一方、かとくの捜査を受けた各社の言い分はこうだ。

「今回の事態は誠に遺憾であり、おわびしたい。すでに長時間労働を解消し、再発防止の措置を講じた」(ABCマート)

「指導監督が不十分だった。今後は研修などで改善に務めたい」(フジオフードシステム)

「こうした事態が二度と起きないよう、万全な再発防止策の運用を徹底する」(ドン・キホーテ)

電通は石井直社長(当時)が全面的に責任を認め、辞任した。

「かとくを甘く見ていたわけです。企業側は表面上の労働時間だけ辻褄を合わせようとしますが、もうそれでは通用しない。

現場は人手不足なので、労働時間を抑えると、サービス残業が発生してしまいます。従業員の不満がたまり、SNSに書き込まれたり、労基署などにタレ込まれたりして、悪質と判断される」(前出・厚労省担当記者)

かとくの戸谷監督官はこう言い切る。

「年配の世代にとって、長時間働いて会社に貢献するのがいいことだという認識がありました。今はそういう感覚では、若い働き手は集まらなくなっているのです。

私生活を大事にする若い世代の感覚を『俺たちの若い頃は……』と年配の方が批判的に見ていることもよくあるようですが、価値観の変換が必要です」

 

だが、そもそも「働き方」を誰が決めるのか。行政が労働時間を機械的に決めることがはたして妥当なのか。カネを稼ぐため、成果を上げるために、「働きたい」人はどうすればいいのか。

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