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小林麻央報道の「印象操作」にザワつく乳がん女子の胸の内

CAに転身・結婚、そんな「病後」もある
松 さや香 プロフィール

「亡くなった人の無念の方が、エラい、尊い」のか?

先日亡くなられた女性アナウンサーの方も、そんなインフルエンサーの1人だったように思う。夫や家族に愛されて、見知らぬ多くの人たちにもその存在を肯定され、応援されていた。彼女の紡いだ言葉の輝きは、同じ乳がん患者以外の方も励まし勇気づけた。それ自体はとても素晴らしいことだが、彼女のような治療環境が整えられない人たちもいる。

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お金の工面がままならず、治療のストレスで周囲の人との間には愛どころか軋轢が生まれ、治療と仕事との両立が難しい――。

そうした人が日本における大半にもかかわらず、世間ではウケ狙いの報道によって、1人の闘病事例が「基準」になっているため、立ち行かなさを訴えると、それは「自己責任」だと突き放される。

「がんになったのは可哀想だけど、受け入れてくれる人がいないのはあなたの人間性が問題」

「休職を快諾してもらえないのは、非正規で働いてきたあなたのせい」

そんな風に訳知り顔で言われるのだ。

もちろん人生は不平等で、社会は理不尽だ。だけど「亡くなった人の無念の方が、エラい、尊い」と言わんばかりの風潮には、違和感しか感じない。

 

これはこの国の報道が、何百万人もいる当事者の事実より大衆ウケを優先し、悲しい事例と美談を喧伝して一部の人を崇め立てた結果だとわたしは思う。その報道は果たして女性アナウンサーの方が自らをさらけ出すことで社会に望んだ、乳がんを理解してもらうことになるだろうか? ならないよ。

わたしは治療生活で感じたこうした違和感をどうしても伝えたかった。今日も日本中、世界中で、医師と看護師、患者と家族は快方を目指して努力している。治療方法、ステージの違いにかかわらず、目指す方向は一緒だ。それを人のブログとYahoo!ニュースで寄せ集めた知識で、当事者が他人に否定されるのはおかしい。