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小林麻央報道の「印象操作」にザワつく乳がん女子の胸の内

CAに転身・結婚、そんな「病後」もある
松 さや香 プロフィール

生きてる人の闘病記って売れないんだよね

当時、わたしは2ちゃんねるの住人と化し、時間が出来ればパソコンの前にへばりついていた。ネットの海は広大だったが、情報リテラシーを持って泳げば有用な情報はそこかしこに漂っていた。

抗がん剤副作用の味覚異常の際、栄養を摂取しやすい食べ物や、ホルモン治療中の副作用の性交痛を和らげる高品質なジェルまで、どれほど集合知に助けられただろう。ありがとう、ひろゆき! ありがとう、おまいら!

今日も日本のどこかにいるだろう、欲しい情報にたどり着けず困っている人の何かの足しになれば---そんな思いでがんとのお金、仕事、恋愛、セックス事情をブログに公開しはじめたのが34歳。そのブログが乳がん患者や一部の好事家の間で少し話題になり、1冊の本として出版される話が動き出した頃には、5年のホルモン治療の終了を迎え、わたしは悲願の36歳になっていた。やったぜ。

 

そうして書籍化が少しずつ進んでいく中で、出版社の1人がこう言ったのだ。

「日本人って可哀想な話が大好きだから、生きている人の闘病記って売れないんだよね~」

ショックで声が出なかった。つまり「あんた生き残ったから、この本ウケないよ」と言われたのだ。繋いできた気持ちと時間、なにより命をつぶすような否定の言葉に目をむいた。

ではマスコミが「ウケる傾向」を追いかけた結果何が起こるかというと、たった1人のインフルエンサーの症状が「乳がんの代表症例」のように報道され、視聴者に偏った知識が広められていくのだ。そしてわたしも自分が罹患するまで、その報道に感化されていた外野だったと痛感した。

若年性乳がんの女性を題材にした某映画などはまさにそれで、乳腺外来の先生たちはみな「あんなに希な進行がんが乳がん全体のことだと思われたら本当に迷惑だ。実際の患者さんにとって何の希望にもならないのに」と怒っていた。

そして若年性乳がん治療後の結婚や出産、転職など数多くある事実に基づいた「治療の先の希望や未来」は、「大衆にはウケない」という理由で報道されないのだ。