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小林麻央報道の「印象操作」にザワつく乳がん女子の胸の内

CAに転身・結婚、そんな「病後」もある
松 さや香 プロフィール

劣等感プロレスとマウンティング

わたしは治療費の為に働いた。懸命に頭を働かせていると、一瞬だけがんの恐怖から離れられた。そして仕事に時間と力を投じれば、対価として報酬だけではなく感謝と信頼までもが返ってきて、承認欲求が満たされた。

これは、うれしい誤算! 仕事を辞めてがんだけに向き合う生活をしていたら、お金の不安や自己承認の満たされなさで、きっとくじけてしまっていただろう。

がんになっても誰かの役に立てている、お金を生み出すことが出来ている。その手応えはどんな薬よりも効いた気がした。

 

没頭できる仕事があったのは、実際に功を奏した。抗がん剤とハーセプチンの投与で、2つあった腫瘍が消失したのだ。これは主治医も驚いて、急きょ、全摘出の予定だった手術は温存手術に変更になった。

しかし、胸を残せる!と小躍りしたのも、つかの間。術式が変わったことで、治療も大きく変更に。放射線治療が追加され、ホルモン治療に加えて1年間のハーセプチンの投与が決まった。

追加された治療の為に、引き続き湯水の如く治療費が出て行く。毎日通う放射線治療、毎日飲むホルモン剤、4週間に一度の点滴。

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治す為とはいえ、これ、いつまで続くのだろう。本調子からは程遠い体調のまま、ゴールがなかなか見えない治療の日々は、周囲の人の心も疲弊させていった。

家族や彼氏と衝突する度に申し訳なさと虚しさ、そして行き場のない怒りが入り乱れ、激しい自己嫌悪にさいなまれた。つらそうな彼氏と家族を見ていると、「患者の家族は第二の患者」という言葉を突きつけられるようでいたたまれなかった。

手術から丸1年を迎え、付き合っている彼との交際も5年目。予後も良好だし、そろそろ結婚? と期待が膨らんでいったある日、わたしの元に知らない女性から「あなたの彼氏と付き合っています」と書かれたメールが届いた。

は? 「これはなにかね?」と半信半疑に問うと、「ごめん!」とすかさず土下座の彼氏。いやいやいや、即答すんなし! 情に訴え正論で責めても、その後も複数回に渡り自称・彼女(メンヘラ)にかち込まれ、土色の顔色をした彼氏の姿を見て思い知った。人生の容赦のなさはわたしががんだろうがお構いなし、恋愛は戦いなのだ。

 

共感と癒しを同じ乳がん患者に求め患者会とやらに顔を出してみるも、支えあいの一方で「私の方がステージ高いから大変」「若年性、若年性って、自分は若いって言いたいの?」など嘘みたいな劣等感プロレスとマウンティングが繰り広げられていた。

つらさを知っているから人にやさしくなれるけれど、一方で理不尽さに腹が立つ。そんな誰もが持ち合わせている、人のどうしようもなさを垣間見た気もした。

わたしが体験した治療生活は一事が万事こんな調子で、テレビで見聞きしたものとは全く違うものだった。