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地震・原発・災害 テロ

20年後に日本が破滅…これは「小説だから」ですむ話なのか

島田雅彦氏の長編SF『カタストロフ・マニア』

カタストロフ・マニア』は未来の日本で、誰もが予測できるような自然災害から文明の破滅へと進んでいく様子とそこでサバイブする弱者とエリートたちの姿を描いた小説だ。来るべきディストピアを見据え警鐘を鳴らす作者の島田雅彦さんに詳しくその内容を伺った。

2036年の文明破滅

―2036年の東京に致命的な厄災が次々と襲いかかり、文明が滅亡する設定の本格SFです。

名作『日本沈没』をはじめとする文明滅亡ものは、ティーンエイジャーの頃からの愛読書でしたし、本格的なSFは小説家になった以上は書きたいと考えてきたジャンルです。

SFと銘打つからには、それに恥じない作品を世に出したい。だから、従来の文明滅亡ものの範疇に留まるものなら、書く意味がないと思っていました。

破滅後の状況下で登場人物たちが生存競争に終始するSFは、もはや紋切り型だと私には思えますし、そこを超えようとする意欲がこの作品を書く上で必要でした。そのため、今回、自分としてはかなり高いハードルを跳んだ気がしています。

 

―主人公のシマダミロクは26歳。ゲームに熱中するフリーターの彼は、報酬目的で新薬治験の仕事を引き受けます。しかし、病院にいるうちに世界が一変してしまいます。

まず、東京上空にオーロラが出現し、コロナ質量放出によって巨大磁気嵐が発生。それにより、電力網と電波網が破壊されます。

鉄道、水道、ガス、通信、あらゆる都市インフラは電気制御なので、高度にテクノロジー化された社会は機能不全に陥る。このように、最初の天災をきっかけに人災が連動、被害が拡大していくことを我々は3・11の震災で体験しましたよね。本作の設定でも、コロナ質量放出の後にライフラインが停止、原発のメルトダウンが起きます。

それに加えて、合成ウイルスによるパンデミックも連動してしまう。毒性の強い合成ウイルスが人工的に作られて、それがテロに使われるんです。これも現在の科学技術ならば、大いにあり得ることです。

―ミロクが無人の東京を自転車で疾走、実家を目指すくだりは、切実な心象風景が描かれます。

フリーターのミロクは、資本主義社会においては負け組の青年です。決して強くはない、どちらかというとヘタレな彼が、破滅世界をサバイブしていくのが、前半のストーリーです。

このサバイバルは最初、コンビニやスーパーに残った商品を漁る「狩猟採集生活」なんです。しかしほどなく、生きるための生産労働に変化していきます。そこでミロクは、各地に分散して形成されつつあった小集団の共同体に入り、その一員となります。

―危機的状況での水力発電や野菜作りには老人たちが活躍します。

老人の経験と知恵、若者の体力と新しい知識が組み合わさることで分業体制が構築され、生存確率が高まるんですね。いまや何もかもがネットで調べればわかる時代ですが、ネットやコンピューターが使用不能な状況ではアナログなスキルを持つ人が身近にいるかどうかが、危機に際しての生き残りのカギになるはずなんですよね。

また、アナログ情報を蓄積した図書館は文明再建の「情報センター」になります。このような前半のストーリーは、文明破滅後のイメージを私なりに現実的に追求したものです。