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Amazonはフードビジネスの改革者となり得るのか?

ベゾスが望むこと、それは「実験」

ベゾスは一体何を考えているのか

2017年6月16日、Amazon は、Whole Foods Market を137億ドル(約1兆5000億円)で買収すると公表した。

Whole Foods はいわゆる「オーガニック・スーパー」の元祖であり、顧客層も高級志向の裕福な家庭が多い。それゆえ Amazon による買収の報も、Eコマースのサイトが実物店舗によるリテイル(小売業)に進出するという意味以上のものとして受け止められた。

あの Whole Foods を一体全体、Amazon はどうしようというのだ? という疑問だ。

ホール・フーズ〔PHOTO〕gettyimages

さしあたって Whole Foods の経営そのものには Amazon はタッチしないという話のようだが、それでも店舗の合理化による人員削減計画なども聞こえてくる。

ゆくゆくはやはり、オーガニック・スーパーの先駆者としての Whole Foods は消えてしまうのではないかと憂慮する声も多い。

そんな懸念が飛び交う中、逆に Amazon に対して、というよりもCEOのジェフ・ベゾスに対して、Amazon ならフードビジネスを根本的に変えられるのではないか、と期待する動きも出てきている。食の世界の御意見番であるアリス・ウォータースによるものだ。

アリス・ウォータースアリス・ウォータース〔PHOTO〕gettyimages

ウォータースは、『アート オブ シンプルフード』という著作もあるように、かねてから「地産地消」を提唱し、サンフランシスコ近郊のバークレーで、その理念を実践するレストランとして「シェ・パニース」を経営する、著名な「食の活動家(フード・アクティビスト)」の一人だ。

今回の買収についても、せっかくならフードにまつわるエコシステムを一新せよ、あなたにならできる、とエールを送っている。エコシステムの革新者としてのベゾスに高い期待を寄せているのだ。

というのも、地産地消の実践にも限界があるからだ。

アート・オブ・シンプルフード

もともとこの動きは、20世紀半ば以降生じた「大量生産」と「大量消費」をつなぐ「大量輸送」におけるエネルギーの無駄遣いに対する反省から始まった動きであったのだが、しかし、もちろん食材の中には地元だけでは育成できないものがたくさんある。

嗜好品はその最たるもので、たとえばコーヒー豆のように、その世界的流通を巡って、生産者への適切な利益還元を保証するよう求める「フェア・トレード」の運動も定着してきた。数年前にシリコンバレーを中心に「サードウェイブ」というコーヒー・ブームが起こったことを覚えている人もいるかもしれない。

 

そのようなフードビジネスを支えるエコシステムを、つまり生産者や購買者、あるいはその両者と直接・間接的に関わる様々な業者からなる「一連の仕組み」を、世界規模で変革できる企業体として、ウォータースは Amazon を評価しようとする。

IT以後の商品とは、もはや単品ごとに、それこそやろうと思えばシリアルナンバー単位で管理することも原理的には可能なものである。製品成分から流通経路まで、一つの製品=商品には多様な情報が紐付いており、今やすべての製品が情報財だ。

そのような情報を通じた「透明な管理」を可能にする力(=権力)をもつのが Amazon であると、ウォータースは理解する。そして、正しくその力を発揮して欲しいと切望する。

ちょうど、ベゾスが社主となってからの Washington Post が、ベゾスによる株の取得が公表された直後にあった戸惑いや疑念を払拭して、変わらずクオリティペーパーであり続けているように、Whole Foods についても、オーガニック・スーパーとして食のあり方に一石を投じた創業精神を尊重してほしいという願いだ。

はたしてAmazonはこのような要望に応えることができるのか。それとも、ウォータースの買いかぶりなのか。

そもそもベゾスは一体、何を考えているのだろうか。