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「離婚はしないがカネはくれ」婚姻費用で人生台無しになりました

カードローン地獄に陥る人まで…

前編では、大手広告代理店で働くAさんが妻に子ども二人を連れ去られた後、婚姻費用(夫婦間で別居をする場合、相手の暮らしを支えるために支払う生活費)によって、貯蓄をすべて失おうとしている様子を記した。

後編では、別居後、実際に婚姻費用を支払わされている男性たちの苦闘ぶりについて、記してみたい。彼らはいったいどのような苦難を経験したのか。

交通事故が不幸の始まり

「3年前の暮れ、妻が交通事故を起こし、死亡事故の加害者となってしまいました。事故の3ヵ月後、妻の弟の結婚式があったのですが、事故のショックやご遺族のお気持ちを考えて夫婦ともに欠席しました。

そのことにメンツをつぶされたと思ったのか、義父母は私に対し大変立腹、その後、私たち一家の分断をはかりました。昨年の3月下旬の夕方、自宅アパートに帰ると、家の中はガランとしていて、妊娠中の妻はもちろん、小学生の長男と長女までもいなくなっていました」

そう話すのは東北に住む高校教師Sさん(43)である。

昨年6月、Sさんは妻から離婚の調停を申し立てられた。夫婦別居時に相手の生活費を支払う「婚姻費用」は裁判所の算定表で即座に決まった。その額はSさんの手取り29万という月給の半分以上にあたる15万円と高額である。

「月14万円では生活を維持できません。光熱費や携帯電話代、ガソリン代、水道代そして食費と支払った上に、アパートの家賃6.2万円を払うと毎月赤字になってしまいます。思い出のこもった自宅アパートで帰りを待ちたかったのですがそれは不可能です。私は隣町の実家に引っ越さざるを得ませんでした」

算定表は子どもの年齢と人数、夫と妻の賃金という要素によってほぼ自動的に決まっていく。専業主婦だったSさんの妻は別居後に働き始めたが、Sさんの支払うべき金額は変わらない。婚姻費用は妻の給料によって左右されるべきなのだが、一度決まったものはなかなか見直されない。

「妻側は離婚が成立しなくても左うちわです。婚姻費用のほかに月給はもらえていますし児童手当や児童扶養手当などといったものも入って来ます。

離婚が成立したらしたで財産分与もあります。一戸建てを建てるために私が積み立てた1000万円などがその対象になる一方、お年玉を入れていた子供用の通帳などは調停が始まる前にすべて下ろしてしまったそうですから、対象外です。

妻は離婚訴訟を起こすという話をしてきてはいます。しかし現時点では私のところに訴状は来ていません」

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「結婚はリスクですよ!」

最先端チップの開発に関わる大手エンジニアのYさん(40)も前編に登場したAさん同様、心身に変調を来した妻に暴力を振るわれた末の別居であった。

「妻は11歳の娘を産んだ後、甲状腺機能亢進症という病気になり、酒の力を借りるようになりました。

それ以来、暴言や暴力が止まらなくなり、警察を呼んで仲裁に入ってもらうこともしばしばで、私は心身ともに消耗してしまいました。そして一昨年の3月、親子3人で住んでいた3LDKのマンションを1人後にしました」

Yさんの年収は総額で約700万円(手取りは約500万円)だが、婚姻費用は5万円。というのも妻の年収300万円弱が考慮されているからだろう。

彼はそのほか現在住んでいるアパートの家賃4.6万円、生活費、弁護士費用などを支払っているため、現在の手取りの月給42万円のうち10万円ほどしか残らない。

マンションの鍵は取り替えられてしまい、家に入れなくなったが、ローン+管理費等の15万円は払い続けている。

 

「仕事が手につかないため、降格となり、年収は100万円以上減りました。現在は、睡眠薬と抗うつ剤を服用しています。

子どもには3ヵ月に1回程度会えるかどうかという感じです。子どもが生まれるまでは仲の良い夫婦だったというのに、産後の病気によって地獄へ落とされてしまいました。

まさかこんな事になってしまうなんて思いもしませんでしたよ。結婚そのものがリスクですよ。ほんとなら出会うべきでなかったのかもしれません。首をくくりたいと衝動的に思ってしまうこともあります」