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今年最大の大型上場!「佐川急便株」は買うべきか、見送るべきか

「株価2倍」のボロ儲けも夢ではない?

創業者の佐川清氏が京都で飛脚業を始めてから、今年でちょうど60年。節目の年に満を持しての上場だ。株価はどうなるのか、配当は、経営は大丈夫なのか、注意点は……プロがすべての疑問に答える。

上場は合併への布石?

アベノミクスもすっかり萎れ、特段目ぼしい材料もなく、日経平均株価は2万円前後でうろうろして突き抜ける気配もない……。そんな梅雨の空模様のようにパッとしない株式市場に、突然「ビッグニュース」が飛び込んできた。

佐川急便が上場へ――。

大手証券会社幹部が言う。

「佐川急便の親会社であるSGホールディングス(HD)がこの6月、東京証券取引所に上場申請をしたことが明らかになりました。時価総額は3000億~4000億円規模になる予定で、今年最大の上場案件になる見込みです。個人投資家からは、さっそく『いつから買えるのか』などと問い合わせが来ています」

しかも、今年は相場全体こそ盛り上がりに欠けるが、実は「IPO市場」と呼ばれている新規上場マーケットは大活況。すでに「バブル」と言えるほどのお祭り状態に沸いている中、SGHDは上場することになる。

「今年のIPOマーケットは絶好調。年初から30社以上が新規上場していますが、上場前に証券会社が売り出す公募価格に対して、上場後に最初に付ける初値が上回ったケースが8割以上です。

しかも、上場後の株価も堅調に推移している会社が多い。SGHDがこうした状況下で上場するのは、絶好のタイミング。

上場審査の承認には2~3ヵ月かかり、早ければ9月にも上場となる見通し。買いたい人はいまから資金を準備しておいたほうがいい」(IPOマーケットに詳しいマーケット・ウォーク代表の鮎川良氏)

とはいえ、'15年に「今世紀最大の上場」と盛り上がった日本郵政グループの株価は、当初こそ跳ね上がったものの、いまや初値割れ状態。痛手を負った個人投資家の悲劇を目の当たりにしてきただけに、「悪夢再び」と警戒する向きもある。

果たして佐川株は「買い」なのか、あるいは「見送るべき」なのか――。

 

「まず押さえておかなければいけないのは、SGHDは財務体質が良く、上場による資金調達を必ずしも必要としていなかったという点です」

と指摘するのは、DZHフィナンシャルリサーチでアナリストを務める田中一実氏である。

「ではなぜ、SGHDは上場を決断したのか。いま物流業界で語られているのは、日立物流との合併が目的ではないかという見方です。

SGHDと日立物流はすでに昨年3月に資本業務提携契約を締結し、SGHDが日立物流の株を約29%、日立物流が佐川急便の株を約20%持ち合っている。将来的には経営統合すると見られていたが、SGHDはオーナー系の非上場企業であることがネックだった。

かつて飲料業界でキリンとサントリーの統合がご破算になったのと同様の事態が懸念されていた中、上場はそうしたリスクを払拭する狙いがあると見られている」

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ヤマトとの大きな違い

実際、SGHDの大株主には、創業者・佐川清氏(故人)の実子である栗和田榮一・SGHD会長や、その関連法人が名を連ねる。

「栗和田氏が今年71歳を迎える中、今後は相続の問題ものしかかってくる。将来的に多額の相続税支払いが発生することを考えると、このタイミングで株式を上場しておけば、市場で株を一部売却してキャッシュも用意できます。

上場で『攻め』の経営資金を得られるうえ、相続対策にもなり、一石二鳥の効果が期待できる」(IPO Japan編集長の西堀敬氏)

目下、物流業界は日本通運、ヤマトHDなどとしのぎを削る「物流大戦争」が勃発しているが、上場を機に「不安要素」を一気に解消して、過当競争から頭一つ抜け出す――。SGHDの経営陣はそんな勝利のシナリオを描いているわけだ。

物流ジャーナリストの森田富士夫氏も言う。

「経営陣には、『企業イメージ』を上げる狙いもあるでしょう。物流業界が抱える問題は、ドライバーなどの人材確保。3Kな業種という評判が立ったことで人手不足が余計に深刻化する悪循環に陥っている。SGHDもその影響で中期経営計画を見直したほどです。

特にSGHDの場合は非上場企業なのでその内情が見えにくく、人材確保で不利になっていた面もあった。それが上場によって経営の透明性を担保できれば、人材確保もしやすくなる。上場で『新生・佐川』のブランドを確立し、その信用力を武器に一気に企業価値を高めていく狙いでしょう」