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「どういうつもり?」彼女から英語で糾弾された場合、どうすべきか

英語には逃げ場がない

アメリカン・グラフィック・ノヴェルの旗手

アメリカのコミックス作家であるAdrian Tomineの姓は、遠峰と書くから日本ではトーミネだ。アメリカではトミーネと呼ばれているはずだ。日本語表記は英文字を平坦に読んで、トミネだ。1974年にサクラメントで生まれた彼の名が知られることになったきっかけは、彼が17歳のとき、1991年から発表し始めたOptic Nerveという手作りの冊子だ。

Adrian Tomine『Optic Nerve』

Sleepwalk and Other Storiesという短編集は1998年に最初の版が出版された。表題作を含めて十六編の短編が収録されている。本を領域で分類するときの言葉に、graphic novelという言葉があり、すっかり定着している。彼の本はこの領域に入っている。

ここで言うグラフィックとは、連続するコマのなかに絵と台詞の言葉がある、というほどの意味だ。Sleepwalk and Other Storiesの場合はノヴェルではなく短編集だが、ひとまとめに多くの本をくくる言葉として、ノヴェルが使われている。

Sleepwalk and Other Storiesの裏表紙に、「ヴィレッジ・ヴォイス」に掲載された書評が引用されている。僕が仮に翻訳すると、次のようになる。

 

「もっとも良かった頃のウディ・アレンとおなじく、エイドリアン・トミネは卓越したストーリー・テラーだ。彼は苦さと甘さという相反するものの日々を、身にしみる鋭敏さで理解して描き出す。細部への注意を怠らない明確な描きかたによって、登場人物たちの心身ともに不安定な寂しさが、呼び起こされる。思春期に見た理想の幻と、大人になってからの魅惑の減退したリアリティとのあいだに横たわる、不明確な海を彼らは手さぐりで生きていく」

この引用のほかに、haunting, spare and witty tales of modern urban life and the struggle to connectという文章もある。Struggle to connectとは、なになのか。Connectとは、いったいどのような状態のことなのか。

Adrian Tomine『Sleepwalk and Other Stories』

僕がSleepwalk and Other Storiesを買ったのは、いまから7、8年前、2010年頃だ。新宿南口の紀伊國屋書店の洋書フロアのコミックスの棚にあった。なんの目的もなく入った書店だ。エイドリアン・トミネの名はすでに知っていた。さきほど書いたOptic Nerveによってだろう。

2008年のイギリス版を、僕は棚から抜き出して手に取った。手にしただけではなく、僕はそれを買った。Sleepwalkという題名は魅力的だったし、and Other Storiesという言葉にも惹かれた。表紙に使ってあった一点の絵も、僕を強くとらえた。