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言論規制下の中国で、「ネット経済圏」が繁栄するフシギ

これが、「アメとムチ」の使い分けか

中国は世界でも最も厳しいとされるネット規制を行いながらも、現実には、さまざまなネットビジネスが発展し、一部は西側にもビジネスモデルとして受け入れられるようになっている。一見矛盾しているこのギャップをどう見たらいいのだろうか。

中国シェアバイク急増のワケ

4月下旬、久しぶりに中国・北京を訪れた。中国人の友人の誘いを受け、北京や河北省にあるお寺を回り、現地の仏教文化に触れるのが主な旅の理由だったが、自分としてはもう一つの目的があった。中国で流行しているシェアバイクに乗ることだ。

中国語では「共享単車」と呼ばれるシェアバイク(自転車シェアリング)は、東京でも都心部で赤い電動アシスト付き自転車によるサービスを見ることが多く、筆者もよく利用する。だが、中国ではシェアバイクシステムが雨後の竹の子のように、日本とは比べ物にならないくらい急成長しているとネットなどで見聞きし、その理由を探ることも含め実際に体験しようと考えた。

 

北京の建国門などの地下鉄駅出入り口には、朝の出勤時間帯ともなると、黄色や赤、青のカラフルな自転車で氾濫する。ofo、摩拜(Mobike)、小藍(bluegogo)などシェアバイクブランドの自転車だが、利用にはスマホのアプリが必要だ。自分が利用した黄色い自転車、ofoであれば、まず利用したい自転車のQRコードや番号を入力。すると鍵の解除番号が分かる。利用した後は鍵をかけ、終了をアプリで伝える。

今回は北京の友人のアプリを借用したが、料金はアプリの電子決済で引き落としになるという。加入時に300元ほどのデポジットが必要だが、料金は1時間1元(約16円)程度と安い。

今や中国での決済の多くが、このようにスマホによって可能だ。それを初めて実感したのは、もう2年近く前のことだ。上海で現地メディアの知人と四川料理を食べた時、支払いの際に友人がスマホを取り出し、バーコードを店員がスキャンすると、決済が終了した。ただしモバイル決済を利用するには中国の銀行の口座や、現地で契約した携帯電話の番号が必要なので、短期滞在の外国人にはハードルが高い。

生活のすべてが「微信」の中に

こうしたモバイルアプリの中で、圧倒的なシェアを誇るのが微信だ。微信は日本のLINEのようなものだが、中国で生活する、あるいは中国関係の情報を収集する上で必須のソフトだ。

以前であれば、宴会の席などで知り合った中国人とまずは名刺交換をしたものだが、最近ではまず、お互いの微信を開き、自分または相手のQRコードをスキャンして、お互いを登録するのが当たり前になった。

 

一度登録すれば、テキストメッセージ、ボイスメッセージのほか、最近では通話機能もあるので、ネットに繋がる環境ならば電話のように使うこともできるし、ビデオ通話も可能だ。中国旅行の際は従来のように携帯電話を持ち歩く必要もなくなった。

中国メディアの報道によると、微信とその海外版、WeChatの登録ユーザー数は2017年第1四半期で9億3800万人に達したという。

「微信はまるでスイスのアーミーナイフのように、あらゆる便利な機能を実現している。それはフェイスブック、スカイプ、ウーバー、アマゾン、インスタグラムだけでなく、他のアプリにはない機能もある。例えば病院の予約や、ショッピングセンターや著名な観光スポットなど、人気の場所の混雑度を示す機能など、このようなサービスは枚挙にいとまがない」

ニューヨーク・タイムズは中国のネットビジネスを紹介する動画でこのように記しているが、微信の凄いところは、単なるメッセージ機能を超えて、中国のモバイルネットユーザーの生活の隅々まで浸透していることだ。同紙はこのような実例を挙げている。

「例えばあなたの飼い犬が汚れていた場合、微信のボタンを押せば、数時間後にはシャンプーとドライヤーを持った業者が自宅に来てくれる。あなたは写真を取り、このサービスにタグを付けて、友人とシェアする。あなたの友人が、退屈な仕事の合間に犬の写真を見て、自分の犬のシャンプーもお願いしようと決める。

彼女は写真に付けられたタグをクリックし、同様のサービスを依頼すれば、すぐに業者は家に来てくれる。そしてその料金は微信のシステムにより即時に支払われ、あなたと友人は微信で『ありがとう』とおしゃべりを続けるだろう」

「さらに、友人があなたにおしゃれなレストランに一緒に行く約束をする。彼女はオフィスで、料理を注文する。タクシーを呼び、料金を支払う。レストランに着くと、アプリはキッチンに到着を告げる。運ばれた料理にやや不満があると、あなたは写真を取り店にマイナスの評価をつける。

食事代を友人が出したのを思い出し、あなたはお金を彼女の口座に移す。こうしたすべてが、微信の中で行われ、ユーザーはこの間、一時たりとも微信から離れることがないのだ」

要は、微信ひとつがあれば友人との情報交換から買い物、飲食まで何でもできるのだ。