記者会見の壇上に向かう綱川智・東芝社長 photo by gettyimages
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子会社が2兆円で売れたとしても…東芝が迎える「悲惨な末路」

残された低採算事業だけではムリ!?

政府・経産省が躍起になっている

東芝は6月21日、子会社「東芝メモリ」の売却先候補として、官民ファンド「産業革新機構」を主軸とする日米韓連合を優先交渉先に決定した。前期末に陥った債務超過状態の解消を目指す、同社の生き残り戦略がヤマ場を迎えている。

東京電力・福島第一原発の廃炉ビジネスの一翼を担う、東芝の国内原子力部門の存続を目論む政府・経済産業省。債務超過の解消で実質破たん状態を脱却させ、融資の不良債権化を回避したい主要行。両者はなんとかこのディールを成功させようと躍起だ。

日米韓連合を主軸に、と言いながら、実は不在の日本勢の顔を作るため、奉加帳を回して日本企業に出資を募る動きもあるという。

とはいえ、東芝の従来からの協業相手である米ウエスタン・デジタル(WD)が、相変わらず同社以外への東芝メモリの売却に反対して法廷闘争を続けており、東芝の目論見通りに今年度中の売却を完了できるか予断を許さない。

仮に売却が成功して希望通り2兆円の資金を手にできても、それで安泰というシナリオを描けるわけではない。

半導体部門を切り離した東芝には、たいした利益の出ない社会インフラ事業しか残らないし、売られたあとの東芝メモリが、日進月歩の業界で必要とされるR&D(研究開発)費用を確保できる保証もないからだ。

 

中国・台湾勢の排除に執念

売却交渉の現状と残る課題を点検してみよう。

 「(東芝メモリ売却の優先交渉相手については)基本的に(政府ではなく)東芝主体で決めた」
 
 「(政府系の)新しい株主が(誕生して)管理しても、投資判断などの経営は東芝メモリの幹部が執行する」

東芝の綱川智社長は、6月23日に開いた有価証券報告書(2017年3月期)の提出延期に関する記者会見で、手続きのプロセスや売却後の経営をめぐる日本政府の関与を問われて、意思決定や経営の主体はあくまで東芝や東芝メモリの経営陣だと反論したという。

綱川智・東芝社長6月23日の記者会見で有価証券報告書の提出延期を発表した綱川智・東芝社長 photo by gettyimages

だが、一連の東芝の経営危機を取材した経験のある記者ならば、この綱川社長の言葉に素直にうなずくことはないだろう。

東芝メモリの売却話が俎上に載ってからも、資金力にモノを言わせて破格の好条件での買収を表明した中国や台湾系の企業に対し、政府・経済産業省は再三、「技術流出の懸念がある」と言い、外為法による事前審査で排除する考えを示し、東芝が選択肢に入れないようにけん制してきたからだ。

また、中台企業などに資金力で劣る産業革新機構が、日米間連合を形成できるように時間稼ぎをしてきたことも周知の事実だ。

そんな政府・経産省のあるキーパーソンが、東芝の原子力部門を存続させるため、さまざまな部門を切り売りさせる構想が政府内にあることをそれとなく筆者に示唆したのは、いまから2年ほど前のことだった。シャープの身売りさえ、それほど話題になっていなかった時期である。

そしていま、政府・経産省の幹部たちは、シャープを買収した鴻海(ホンハイ)精密工業が追加リストラを迫ったことを公約違反と決めつけて、東芝メモリの売却先から中台勢を排除することに一段と執念を燃やしていると聞く。

放漫経営が続いたシャープの再建については、誰が担い手になってもリストラが必要だったことを認めない政府・経産省。その頑なさには、首を傾げざるを得ない。現在進行中の東芝メモリのディールの合理性や、その先の再建策の実現性にも不安を抱かざるをえない一因が、ここにある。