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恐竜以前の世界、陸上の覇者は一体だれだったのか

古生物の超マニアックな世界へようこそ

2億9900万年前の世界の覇者は?

今日の陸上世界は、哺乳類が支配している。

こう書いても、まあ、誇大ではあっても、完全な誤りではないだろう。各地の生態系では、肉食性の大型哺乳類を頂点とした社会が構築されている。一方の海洋世界では、こちらは基本的には魚の仲間が生態系の主役を担うものの、クジラなどの哺乳類も一定の地位を確立している。

こうした世界観は、“つい最近”になって確立されたものだ。今から6600万年前、一つの巨大な隕石が地球に落下して、それまで地球を支配していた爬虫類は、いっきにその座を追われることになった。その代表が陸では恐竜類であり、海ではクビナガリュウ類などの海棲爬虫類だった。

6600万年前を「つい最近」と言ってしまうことには、抵抗を感じる人が多いかもしれない。しかし、地球の歴史は実に46億年におよぶ。この視点で考えれば、6600万年間という時間は全体のわずか1・4パーセントである。地球の歴史を1日にたとえると、6600万年前という時間は、ほんの20分前にすぎない。

さて、陸上において哺乳類が“支配権”を得る前には、恐竜類がその座にあったことはよく知られている。

 

では、恐竜類が台頭する前に、陸上世界の覇者は何だったのだろうか? 恐竜類をはじめとする爬虫類が時代の主役となったのは、今から2億5200万年前のことである。では、その前の主役はいったい何だったのか?

おそらく、多くの方々が、学生時代に次のような脊椎動物の進化の流れを教わったことと思う。

すなわち、まず魚類が生まれ、魚類から両生類が進化して、両生類から爬虫類が誕生。その爬虫類から鳥類と哺乳類が生まれた。

この流れに則るのであれば、爬虫類が覇権を確立する前には、両生類の世界が広がっていそうである。

しかし、実際にはそんなシンプルな話ではないし、そもそも「まず魚類が生まれ〜」から始まる一連の流れは、今日では修正を余儀なくされている。

細部についての説明は省くが、まず哺乳類とその近縁の動物たちを含むグループとして「単弓類」という言葉が“一般化”し、爬虫類と単弓類はそれぞれ独立して両生類から進化したとみられているのである。これは、中学校レベルの教科書の話だ。

そして、2億5200万年前に爬虫類が生態系の主役となる前は、そんな単弓類が地上生態系の覇者たる地位にあった。つまり、私たちの祖先の親戚たちが、恐竜たちよりも前に生態ピラミッドの上位を占めていたのである。

単弓類がその座にたどり着くまでの道のりも決して平坦ではなかった。明らかに単弓類が主役といえる時代は2億9900万年前にはじまる。その前には、小さな魚の仲間からはじまる2億年をこえる長い進化の道のりがある。

そして、魚の仲間たちが弱小にすぎなかった時期には、世界は節足動物(カニやエビ、昆虫などの仲間)によって支配されていた。魚の仲間は、生態系の“端っこ”で細々と生きていたにすぎない。

節足動物の支配から魚の仲間が“下克上”を果たし、そして単弓類による覇権の確立までの時代を「古生代」という。このたび上梓した『カラー図解 古生物たちのふしぎな世界〜繁栄と絶滅の古生代3億年史』(講談社ブルーバックス)は、まさにこの時代の生物に焦点を当て、最前線の研究情報などを盛り込んだ一冊である。

アノマロカリス・カナデンシス/「史上最初の覇者」。力の弱い“優しき支配者”だったのではないかといわれているカンブリア紀の英雄で、大きな触手(大付属肢)と大きな眼がトレードマーク。全長1メートル