スマートエネルギー情報局
2017年06月28日(水) 加谷 珪一

アメリカが「世界最強の資源国」になる日

シェールガスが国際政治を変える

近い将来「全エネルギー自給」が可能に

米国のエネルギー政策が大きく変わったのは、ここ10年の間にシェールガス/シェールオイルの開発が急激に進んだからである。

シェールガスは頁岩(けつがん)と呼ばれる堆積岩の地層から採取される天然ガスである。頁岩層にガスが存在することは以前から確認されていたが、低コストで採掘する技術がなく、ほとんど顧みられることはなかった。

ところが1990年代の後半に水圧破砕法という新しい技術が開発され、比較的低コストで天然ガスの採掘を行うメドが付いたことから一気に開発が進んだ。シェールオイルも、シェールガスと同様、頁岩層から採取することが可能だ。

頁岩層は米国内に広く分布していることから全米各地で採掘が進み、天然ガスおよび原油の生産量は急増。2012年には世界トップの生産量だったロシアを追い抜き、世界最大の天然ガス生産国となった。さらに2014年にはサウジアラビアを抜き原油の分野でも米国は世界最大の生産国となっている(日量ベース)。

これまで米国は、基本的に自国で産出したエネルギーを自ら消費し、足りない分については輸入していたが、米国は近い将来、すべてのエネルギーを自給できる見通しとなっている。

エネルギーがダブつくことはほぼ確実であり、米国にとっては余剰エネルギーを輸出に回したほうがむしろ国益にかなう状況となってきた。日本や中国に対する輸出を相次いで許可していることにはこうした背景がある。

パワーバランスが変わる

米国はエネルギーの消費国から資源国に変わりつつあるわけだが、これは地政学的な状況を一変させる可能性が高い。

米国がエネルギーを自給できるようになると、理論上、サウジアラビアなど中東の産油国に依存する必要がなくなる。米国が「世界の警察官」として振る舞ってきた理由の一つは、石油の安定確保のためだが、こうした制約がなくなった以上、過剰に中東情勢にコミットする必然性は薄くなった。

中東各国はこうした地政学的変化に極めて敏感である。特に、米国を後ろ盾に中東の盟主として振る舞ってきたサウジアラビアの危機感は大きい。

サウジアラビアを訪問したトランプ大統領サウジアラビアを訪問したトランプ大統領 Photo by GettyImages

トランプ大統領は、就任早々サウジアラビアを訪問し、友好関係をアピールしたが、その後、サウジが取った行動はカタールとの断交であった。

サウジがここまで強硬姿勢に出た理由は、トランプ大統領からの支持を得た安心感というよりも、米国の後ろ盾はいつなくなるか分からないという不安要因のほうが大きいと思われる。

一方、米国はエネルギーの安全保障を考慮することなく、フリーハンドで経済政策や外交政策を立案できるようになった。トランプ氏が掲げるアメリカ・ファーストは、決して、机上のスローガンではなく、現実的に選択可能な政策といえる(国際社会における米国の評価とは別に)。

トランプ政権は、地球温暖化の国際的枠組みであるパリ協定からの離脱を宣言したが、こうした決断も簡単にできてしまうのが現在の米国である。

一部の国にとっては、米国の変容は脅威かもしれないが、日本にとってはそれほど悪い話ではない。実際、これまで不可能だった米国産の安価な天然ガスを輸入することが可能となった。

これまで日本にとっては、中東一極からエネルギー調達の多様化を進めようと思ってもロシアくらいしか選択肢はなく、政治的リスクが大きかった。

米国が積極的に安価なエネルギーを輸出してくれれば、日本はもっと機動的に動くことが可能となる。カタールとサウジの断交も、カタールとの天然ガス取引を見直す絶好のチャンスとなるかもしれない。

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