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人口・少子高齢化 現代新書

2023年・人件費高騰で、日本の企業が機能不全になる

恐るべき「未来の年表」を公開
2019年、IT技術者が不足し始め、技術大国の地位が揺らぐ。2021年、介護離職が大量発生し、企業は管理職の人材不足に喘ぐ――人口減少はビジネスに大打撃をもたらすばかりではなく、社会全体が機能不全に陥る重大な問題だ。(詳しくはこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51994)そんな閉塞感漂う未来の日本の姿を著し発売即4刷となった話題作『未来の年表』から、「2023年」の日本の予測値を特別公開する。

企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる

「注文は殺到しているのに、人手不足だから断らざるを得ないんだ……」

会社経営者からこんな嘆き声を聞くことが多くなった。景気の回復で需要が伸び、人繰りが追いつかないという業界もあるが、今後の日本の人手不足は経済動向だけでは計れない。むしろ少子高齢化に伴って、働き手全体の不足が顕著になってきていることに気付かなければならない。

その落ち込みは、目を覆いたくなるほどだ。

2015年国勢調査の抽出速報によれば、労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口〔就業者と求職者の合計〕の割合)が、前回2010年調査に比べて1.4ポイント減の59.8%となり、6割を切った。

実数でみると、労働力人口は6075万人と、295万人の減少である(前回調査は6370万人)。それは今後、さらに減っていく見通しだ。

内閣府が2014年に公表した労働力人口の将来推計によれば、

(1)合計特殊出生率が2030年に2.07にまで上昇し、以降同水準が維持される
(2)女性の労働力率が現在の約50%からスウェーデン並み(2030年85%、2060年90%)に上昇
(3)60歳以上の労働力率を5歳ずつ繰り上げる

といった3条件を満たしたとしても、2013年の6577万人から2030年には6285万人へと、実に300万人近く減る。2060年には5522万人である。

 

現状の水準で継続した場合についても試算しているが、数字はさらに悪化し、2030年は900万人近く少ない5683万人、2060年には3795万人と半減に近い落ち込みになると予測している。ここまで減ったのでは、日本経済が大きな打撃を受けるだけでなく、社会全体が機能不全に陥るだろう

活気がなくなる、消費が冷え込む

労働力人口についても、減少が避けられないことを前提として対策を考えなければならない。政府は「1億総活躍社会の実現」や「働き方改革」を掲げ、女性や高齢者などがそれぞれのライフスタイルに合った様々な働き方ができるよう選択肢を広げようと急いでいるが、改革は緒に就いたばかりである。

長きにわたり「若い男性」を中心に成り立ってきた日本の労働慣行が、直ちに改まることはないだろう。景気動向に左右される短期的な人手不足とは異なり、人口減少に伴う構造的な労働力不足は、一朝一夕に解決する問題ではないのである。

労働力人口が減少すると、経済規模や労働市場が縮小する。国内総生産(GDP)はその国で1年間にどれだけのものが生産されたかという概念によって量られる。簡単に説明すれば、労働者数に労働者1人あたりの年間労働時間や年間生産量を掛けたものだ。人間1人に与えられた時間は1日24時間であり、そのうち働くことができる時間は限られている。

労働力人口が減れば、日本全体としての年間労働時間も減る。GDPを維持しようと思えば、労働生産性を上げるしかないが、口で言うほど簡単ではないだろう。

労働力人口減少の影響は、経済成長やビジネスの現場だけではなく、日常生活にも深くかかわる。労働力人口となる若き世代は、社会を支える役割も担っている。地域コミュニティのリーダーとして活躍している人も少なくない。

こうした人材が減ったのでは地域に活気がなくなる。地域の伝統行事や祭事の継承も難しくなる。高齢者や子供に対する地域の見守り機能は衰退し、治安維持や災害時の手助けもままならなくなる。

労働力人口となる世代は消費のリード役でもある。購買力のあるこの世代が減ったのでは消費も冷え込み、経済が停滞する悪循環をもたらす。結果として税収も落ち込み、地域によっては、行政の予算編成がままならなくなる事態にもなりかねない。

人手不足はあらゆる仕事にふりかかる。県庁や市役所といった行政機関で若手職員を思うように採用できなくなれば、住民サービスの提供に支障が出る。